第4章 すれ違い
慌てて階段をかけ降り、道に出ると前から金色の髪を揺らして歩いてくる人影を見つける。
そう私の大好きなあの人。
「…陽奈子?!こんなところで何をしているのだ?」
急に現れた杏寿郎にびっくりしてしまったのと、先程思い出した出来事が合わさりドキドキが止まらない。
「きょ、じゅろっ!!ちょっと不死川さんに用が…、ごめん!またね!!」
「陽奈子!?」
名前を呼ばれたが振り返ることができず、逃げるように自分のアパートへ帰る。
だって、あんなタイミングで会ってしまったんだ…
どんな顔をしていいかわからなかった…
~煉獄side~
業者と打ち合わせが終わり、今日の書類を届けるために不死川の家に向かっていた。
不死川が休むなんて珍しいと思ったが、事情が事情なだけに仕方がない。不死川以外に家には誰もいないのだ。
猫とて、きちんと生がある。もしものこともあるだろうから、俺が代わりに行くから休めと言ったのだ。
ちょうど陽奈子の家の前を通りかかる。
陽奈子の部屋を確認するとまだ明かりがついていなかった。
「(また、店に残って練習だろうか?これを届けたら顔を出してみようか…)」
そう思っていると不死川のアパートから陽奈子が出てきた。
「…陽奈子?!こんなところで何をしているのだ?」
慌てているようだが、何かあったのだろうか?
少し顔が赤いようだが…
「きょ、じゅろっ!!ちょっと不死川さんに用が…、ごめん!またね!!」
「陽奈子!?」
そう呼び止めても振り返ることはなかった。
「(よもや…不死川と何かあったのか!?)」
もやもやする気持ちを押さえつつ、不死川の家のインターフォンを押した。
がちゃっ
するとすぐに出てきた。
買い物袋を片手に猫を抱いた不死川が出迎える。
「おー、今日は急で悪かったなァ」
「…う、うむ!一通り打ち合わせは済んだ!」
先程の陽奈子のことが気になるが、焦る気持ちを押さえる。
「ありがとよォ、明日には出れると思う。」
「…不死川、ひとつ聞いていいか…?」
確認をするために一呼吸ついてから問いてみる。
「…今陽奈子と下で会ったんだが…その、慌てていたので、何かあったのかと…」