第4章 すれ違い
あ、なるほど。
「…笑えよッ。」
恥ずかしそうにそっぽを向きながら、そう吐き捨てる。
「別に可笑しくなんてないですよ?可愛い名前じゃないですか、おはぎちゃん!」
「…」
黙っている不死川さんを見て思うことがひとつある。
「あの…お節介かも知れないんですが…」
不死川さんの代わりに、おはぎちゃんのエサやら何やら必要なものを買い揃えて、不死川さんの家に向かっている。
私が「お節介かも知れないけど、買い物行ってきましょうか?」と不死川さんに聞いてみたのだ。
飼い猫に元気がなければ、一人にして買い物に出るのは不安だろうと思い、その役を買って出た。
不死川さんは「お前、ホントにお節介だなァ」って言いながらも頼ってくれた。嬉しい。
不死川さんの家は私の3軒隣のアパートだった。
すごく近くてびっくりしたけど、方向音痴な私にとってはありがたい。
ピンポーン
インターフォンを押すと、不死川さんが出てくる。
「お待たせしました!」
と買い物袋を渡すと、中からおはぎちゃんが駆け寄ってくる。
「にゃぁ」
「かっわいいー!触っても、いいですか?」
恐る恐る聞くと「おー」と短く返事をしてくれた。
茶色い毛並みはふわふわしていて触り心地がいい。
体は茶色で尻尾だけなぜか真っ白。それが可愛い。
「はぁー!もう可愛すぎて癒されます!」
とじっとおはぎちゃんを見つめるとふと気付く。
「…あ、あぁ!!!」
思い出して大きい声を出してしまった
「うるせェな。おはぎがびっくりすんだろォ」
と言っておはぎちゃんの頭を撫でる。
「す、すみません…いや、この間おはぎちゃんを見かけたので…思い出して、つい…」
「あ?どこで見たんだァ?」
それを聞かれてあの時、おはぎちゃんが飛び出してきたことによって杏寿郎に支えてもらったことを思い出し、顔が熱くなる。
「…っ!すみません!今日はありがとうございました!私これで失礼します!!」
おはぎちゃんを不死川さんに託し、走り去った。
「ありがとうはこっちの台詞だろォ」
と不死川さんが呟いた気がした。