第3章 優しさに触れて
~煉獄side~
陽奈子の家を出てから、電話の主の元へ向かう。
本当は陽奈子ともっと一緒にいたかったが…
「煉獄さん、こちらです」
車を降りてすぐに声をかけられた。
「うむ。胡蝶すまない。待たせたか?」
「いえ、私も先ほど着きましたので…陽奈子さんには?」
「大丈夫だ!何も言ってはいない。」
胡蝶からの電話は、フラムの2号店のことだった。
少し前から、恐らく陽奈子が来る前からだろう。
ずっと良さそうな物件を探していて、今回良さそうな場所を見つけたので寸法を測ったり、間取りをチェックするのに来ている。
「すみません、折角陽奈子さんとデートだったのに…」
と胡蝶が申し訳なさそうに眉を寄せる。
「いや、仕方がない。これも大事な仕事だ!しかし、いい物件があってよかったな」
そう言いながらあちこち、メジャーを使って計測する
「まだ陽奈子さんには内緒にしておいてくださいね?驚かせたいので。あ、この辺りから厨房にしたいのですが…」
陽奈子が知ったら、どう驚くだろうか?
きっと喜ぶだろう…その顔を想像すると自然と顔が綻ぶ。
「(あらあら…)煉獄さん?聞いていますか?」
「む?!すまん…厨房はどのくらいのものをいれる予定だ?」
仕事の頭に切り替え、胡蝶と下見を続けた。
「なかなかよさそうですね!ここに決めましょう!早速オーナーに報告です!」
そう言って胡蝶は電話をしに外へ出た。
そういえば、この辺は陽奈子の家も近い。
車でそんなに時間はかからなかった。
もし、陽奈子がこっちの2号店で働くこととなれば、近くていいだろう。
来る道中、店もあったり、街灯もたくさんあったからそう危なくはないだろう…
「(!!お、俺は少し…陽奈子に対して過保護なのでは…)」