第3章 優しさに触れて
「む?そうみたいだな。すまん、出てもいいか?」
「どうぞどうぞ!」
と言うと、洗い物の続きをしにキッチンに戻る。
「うむ!…そうか!それはよかった!!」
なんだか楽しそう…
誰からだろう…?
「む。そうか、わかった…それは黙っておこう!」
そう言うと電話を切り、こっちを見る杏寿郎。
「誰から?」
電話の相手が気になり、問い掛けてみる。
「…胡蝶からだ!」
しのぶちゃん?
一体なんの話だろうと気になるが、私に聞く権利などないと思いそのまま黙る。
「(しのぶちゃんからなんて…確かに杏寿郎としのぶちゃんは付き合いが長いしこういった電話もあるだろうけど…なんだろ、もやもやする)」
そう思っていると杏寿郎が声をかけてきた。
「陽奈子。すまないがそろそろ帰らなくてはならなくなった。名残惜しいが…」
そう言う杏寿郎はどこかしょんぼりしていた。
「いいよいいよ!気にしないで!杏寿郎も忙しいだろうし。」
「…よかったら、またこうして何処かへ出掛けないか?二人で。」
そう言われるとドキリと心臓が跳ねる。
「…う、うん。そうだね!今度は美味しいさつまいもスイーツでも食べに行こっか?」
杏寿郎の顔がぱぁっと明るくなり「うむ!さつまいもツアーだな!はっはっは!」と笑いながら身支度を整える。
玄関まで見送り「気をつけてね!」と送り出す。
杏寿郎も「あぁ!ご馳走さま!帰ったらまた連絡する」と言って家を出ていった。
杏寿郎が帰ったあと「何処かへ出掛けないか?」と言う誘いを思い出し、期待してもいいのだろうか?と思い嬉しさが込み上げる反面…
「(さっきの電話はしのぶちゃん…電話がきてすぐに帰らなくちゃ行けなくなったのは、しのぶちゃんに会うため…?それって…)あー、もうやめよ!片付けしよ!」
そう言って残りの洗い物に手を掛けた。