第3章 優しさに触れて
ボウルに牛乳、卵、砂糖を入れてかき混ぜる。
食パンを出して、卵液に浸す。
フライパンにバターを入れて溶かし、浸したパンを焼く。
焼いていると甘くていい匂いが鼻をくすぐる。
「甘いいい匂いだな」
「でしょ?もうすぐ出来るから!」
しばらくして杏寿郎の目の前に作ったものを出す
「ケーキじゃなくて申し訳ないけど…」
と言って目の前に出したものは"フレンチトースト"
「む?これは何と言う食べ物なんだ?」
「杏寿郎、食べたことないの?じゃ初フレンチトースト記念日だね!はい、温かいうちに食べてみて?」
と、ナイフとフォークを渡すとフレンチトーストを切って口に運ぶ。
「…」
「どう、かな…?」
口に合うかと、少し不安な気持ちで聞くと…
「わっしょい!!」
「え…?」
「…あ、すまん。すごく美味しいものを食べるとつい、わっしょいと言ってしまうのだ…」
と、杏寿郎はポリポリと恥ずかしそうに頬をかく。
「あ!そういえば、初めて会ったときお店でさつまいものモンブラン食べたときに"わっしょい!"って言ってたね!」
「うむ。さつまいもの場合は毎回言ってしまうのだ。だが、この"ふれんちとーすと"と言うのはさつまいもと同じくらいうまい!また作ってくれるか?」
片言のように"ふれんちとーすと"と言う杏寿郎が可愛いと思いながら「また作ってくれるか?」と聞かれるとつい頬が緩んでしまう。
「もちろんだよ!そんなに喜んでもらえるならいくらでも作る!でも、急いで作ったから味に自信なかったんだけど…」
と私が言うと「ならば、陽奈子も一口。ほら」と自分の使っていたフォークでフレンチトーストを刺すと、私の口元に持ってくる。
「…っ!!(こ、これはか、かか間接き、す!?)」
意識しているのは私だけみたい…
「じゃ、じゃー、い、いただきます。」
ぱく
「どうだ?うまいだろ?」
「うん!我ながらおいしい!あ、じゃない。わっしょい!!」
杏寿郎が私を見て微笑む。
「いいわっしょいだ!よかったら陽奈子も使ってくれ!」
いや、二人のときしか言えないよ。さすがに人前は恥ずかしい…と、心のなかで呟く。
するとどこからか電話の鳴る音が聞こえた。
「電話…杏寿郎のじゃない?」