第3章 優しさに触れて
「あ、あのさ、杏寿郎!私、行きたいところがあるんだけど…」
申し訳なさそうにお願いしてみる
「どこに行きたいのだ?」
「えっと…スーパーに…。」
なんか主婦みたい…
「…そんなところでいいのか?折角車があるのだから、何か大きいものとか…」
「ううん!一週間分をまとめて買うから、意外と重くて…ダメかな?」
「いや、俺は構わない。どこがいい?」
ちょっとわがままを言いすぎてしまっただろうか?
そんな心配をしながら「お願いします」と、頭を下げた。
「うむ!任せてくれ!だが、その前に昼を食べていないだろう?」
すっかり忘れていた。
いつもは朝ごはんをあまりきちんと食べないのに、今日はわりとしっかり目に食べたので、あまりお腹が空いていなかった。
「そっか!もうそんな時間かー。杏寿郎は何か食べたいのある?」
「うーむ…そうだな……」
お昼を食べて(もちろんお昼代は出した)、行ってみたかった大型のスーパーへ。
「うわぁ!すごーい!!」
いつも行くスーパーよりも広く、商品もたくさんあるので、子供のようにはしゃいでしまう。スーパーでお買い物するの結構好きだから、これだけあると品数が多いと若干興奮してしまう。
「ここも家具屋のように広いな。何から買うのだ?」
と、そう言って杏寿郎がカートを押してくれる。
「あ、ありが…と…(な、なんかこれって新婚さんみたい!)えっと人参と玉ねぎ……」
そんなことを考えながら買い物を続ける。
「(杏寿郎はどう思ってるのかな…?)」
チラッと見るといつも通りの表情。
「(変に意識しているのは、私だけなんだろうか…)」
ぼーと考えていると、ぬっと杏寿郎の顔が目の前にいた。
「どうした?買い忘れでも思い出しているのか?」
不意打ち過ぎて驚くと同時に顔が熱くなる。
「…な、なんでもないよ!(やっぱり杏寿郎は私のこと…)あれ?」
少し離れたところに、さっき家具屋で会ったはずの宇随さん達を見かける。
後ろ姿はなんだかとても幸せそう。
見つめ合って会話をしながら笑い、片方の手はそれぞれの手に指を絡ませるように繋いでいる。
「…すごく、幸せそうだね…お似合いのカップル。」