第3章 優しさに触れて
「…っ、ご、ごめっ…可笑しくて…はぁー苦しい!涙出たー!」
「理由は知らんが、笑うのはひどいと思うぞ!」
腕を組ながらそっぽを向いて座る杏寿郎に、ちゃんと理由を話す。
「ホントにごめんね?悲しい話しとかじゃないの!小さい時に花火で火傷したの。お兄ちゃんと弟とあと、従兄弟とふざけててさ。前にも話したけど、私の親族は男の子ばっかでさ。女の子は私一人だけだったから、一緒になってよくやんちゃしてたんだ。」
前に家族の話を杏寿郎としたときがあった。
そのときに、私の家族構成を教えていたのだ。
「そ、そうなのか!?やんちゃをしていたとは…今の陽奈子では考えられんな!想像がつかん!!」
「そうでしょ?小学校高学年くらいから、ちょっと恥ずかしくなっちゃって、少し女の子っぽくしようと努力してたからね」
そう言いながら買った飲み物を口に含む。
「でも…この火傷のせいで、弟は責任感じちゃっててさ…」
杏寿郎が「責任…?」と首を傾げる
「弟が私に向けて爆竹投げてきたの。それが運悪く服の隙間から入っちゃって、この通り。弟は「責任取って、ねーちゃんと結婚する!」って聞かなくてさ…困っちゃうよねホント。その後、花火したがらなくなっちゃって…私は気にしてないって何回も言ったんだけどね。あの子、私と一緒で頑固だし…」
「それは災難だったな…今は、痛むのか?」
心配そうに覗き込んでくる。
「ううん!ぜーんぜんっ!傷が残ってるくらいで、なんともないよ。」
「そうか、それはよかった。」
そう言って少しだけ悲しそうな顔をして胸を見てくるから
また「杏寿郎の…エッチ。変態!」と言って笑って見せた。
その後、ソファを受けとると、お店を後にした。
「やっぱり大きい車は違うね!すっぽり入っちゃうなんて!」
大きな車だとは思っていたが、ソファが楽々入ることに改めて感心した。
「大工が使ってるから、これくらい車内も広くないとな!」
杏寿郎が運転してるのは大きなバン。
私も車の免許は持っているけれど、ペーパードライバーってやつ。
それにこんな大きな車は絶対に運転できない…
「この後はどこか寄るところはないのか?」
杏寿郎が「行ける範囲で連れて行くぞ」と言ってくれる。
ふ、と考えた。