第3章 優しさに触れて
~煉獄side~
家に行くと、寝起きなのかボサボサの髪の宇随が顔を出す。
「…なんだよ、事件って」
面倒くさそうな顔をしながらも、ちゃんと聞いてくれるところが嬉しい。
「大変なのだ!!不死川と陽奈子が仲良く店まで歩いていったぞ!?あれはどういうことだ?しかも、すごく楽しそうだったぞ!」
「別になんでもないだろーよ、不死川が陽奈子のこと女としてみてるとは思えねーし。」
「ではどうして…」
ベッドにドサッと座り、タバコをふかす。
「ふー…そんなに気になるなら自分で確かめてみればいいんじゃねーの?」
「それが出来ないから宇随に聞いているのだ。」
脳裏に焼き付いているのは、不死川にあの笑顔を向けて笑う陽奈子の楽しそうな顔。
思い出すだけで、心がぎゅっと締め付けられるようだ
「ふ、いい顔するようになったな。お前もようやくその気になったようだし、男なら先手必勝だろ!!」
「先手、…必勝?む!?不死川より先に何か仕掛けるのか!?」
「いや、あいつが陽奈子のこと好きってことはあり得ねーと思うが、一応釘は打っとく必要あるかもな。お前見てると、こっちがイライラすんだよ!焦れったくて!!」
若干額に青筋をたてながら、タバコの火をグリグリと灰皿に押し付けた。
「…ふ、不甲斐ない…」
「ったく、ぐいぐい思う通りに真っ直ぐ突き進むのがお前だろ!二人でデートでもしてこいよっ!」
びしっと指を指された
「よ、よもや…デートなどしたことがないのだ…具体的にどういうことをするのがデートなのだ?」
きょとんと首を傾げる俺を見て、宇随は深いため息を付いた
「…俺はそんなことも教えてやらなきゃなんねーのか…」
「す、すまん…」
どんどん声が小さくなる俺を見て呆れた顔をしながらも紙を取り出して何やら書き始めた。
「デートっつっても、お前らはまだ付き合ってねーから、手を繋ぐとかキスするとかはまずねーな。」
「…キス?………よ、よもっ!!想像しただけでたえられん!!」
「…お前、人の話聞けよ。ま・だ、付き合ってねーからそーゆーことはしねーの!!間違ってもすんじゃねーぞ!あいつもお前と一緒で免疫なさそうだから、そんなことやったら一発で嫌われるぞ、多分!」
「嫌われてしまうのは困る!!」
「だったら、すんなよ!」