第2章 好きの違い
「そ、そうか…では駅まで送ろう。」
駅まで歩いていき、タクシーを捕まえた陽奈子は車内から手をブンブンと降りながら帰っていった。
「(うむ。なんとか今日を乗りきった…)」
緊張でどうなるかと思ったが、なんとかやりきり安堵のため息は吐く。
「はぁ~…(あの本を見られなくて本当によかった、あれを見られてはどう説明をしていいか分からないからな」
カバーの付いていた本は宇随が「これ見て少しは勉強しろ」と、持ってきたものだった。
家に戻ると、その本を手に取り、カバーを外す。
「こんな恥ずかしいもの、置いておけるはずがないだろう……」
その本のタイトルは
【掴め乙女心!これであなたも恋愛マスター 初級編】
と、書かれていた。
翌日。
俺は休みだったので軽くランニングをしようと外へ出る。
フラムの前を通りすぎ、駅に向かって走っていく。
すると、改札から陽奈子が出てくるのを見掛ける。
「(よ、よもや!)」
咄嗟に隠れてしまう。
む?なぜ隠れるのだ!?別にやましいことなど…
と、隠れた柱から覗き込むと、なんと隣には不死川がいるではないか!!
ど、どういう関係なのだ!?こ、恋仲なのか!?そんなことは一言も聞いてないぞ…
も、もしや不死川も陽奈子に想いを寄せていたのか!?
むぅ…今日から不死川は恋敵だな。負けていられん!!
「なんでついてくるんですか…?」
少し怯えた目で不死川を見る
「別に付いていってる訳じゃねぇよォ、俺は…お、おは、おはぎが喰いてェだけだ!」
恥ずかしそうにそっぽを向く。
「ふふ、ホントに好きですね。まー、分かります、美味しいですよね、オーナーの作るおはぎ。私も好きです」
そう言って不死川に微笑み掛ける。
「…うっせェ…」
ぶっきらぼうに吐き捨て、二人は並んで歩いていった。
「(あ、あんなに楽しそうではないか!!こ、これは一端宇随に相談せねば!!)」
スマホを取り出し、宇随に電話を掛ける。
『よぉ、煉獄。昨日は陽奈子押し倒さなかったかー?』
宇随の茶化しは完全に無視。
「宇随!!大変なことになった!!大事件だ!至急そちらへ向かう!!」
『はぁ?なんだよそれ、俺まだ起きたばっかなん…』
話の途中で通話を切り、宇随の家に向かった。