第2章 好きの違い
後ろから急に陽奈子の声が聞こえて、思わず飛び上がる
「よもっ!!!」
ガンっ
飛び上がった瞬間に開いていた戸棚の扉に頭をぶつける。
「だ、大丈夫!?ごめん驚かせちゃって…」
と陽奈子が覗き込んでくるので
「だ、だだだだいじょうっぶだ!!陽奈子は部屋で待っていてくれ!!」
恥ずかしさを隠すよう思わず声を張ってしまう
陽奈子は「そう?じゃ、お言葉に甘えて…」と部屋へ戻っていった。
とにかく平常心だ、と心を静めお茶を入れて部屋に戻ると陽奈子がソファに座ってアルバムを見ていた。
「ありがとう!ねぇ、これって弟さん?」
と言って、写真を見せてくる
「うむ、年の離れた弟だ!千寿郎という」
「杏寿郎にそっくりだね!」
そう言ってまた次の写真に目を通す。
写真一枚一枚にこれはこうで…と説明しながら、最後まで見終えると
「煉獄家は血筋が濃いんだね、でも素敵な家族…」
微笑みながらそう陽奈子が呟き、アルバムを閉じた。
本棚にアルバムを返そうとすると、1冊カバーがかかった本に目を止めた。
「この本は何?」と手に取ろうとする陽奈子を全力で止める。
「そ、それはダメだ!!」
勢いよく、止めに立ち上がった為よろけて転んでしまいそうになる。
転ばないよう本棚に向かって手をつくとその勢いで棚の本が落ちてくる。
「わっ!」
「陽奈子!!」
俺は咄嗟に陽奈子に覆い被さるように抱き寄せた。
「危なかった…怪我はないか?」
「…っ!う、うんっ、だいじょぶ…」
「それはよかった…っ!?」
突然のことで頭がいっぱいだったせいで、陽奈子を抱き締めていることが分からなかった
それに気付くと顔から湯気が出るほど熱くなる。
「す、すすすすすすまない!!!」
と、勢いよく両手をあげて離れる。
「ううん、守って、くれたんでしょ?ありがとう、優しいね!」
と微笑んでくれた。その笑顔は反則だ……
その後は気まずい雰囲気を和ますように陽奈子が色々な話をしてくれた。
自分の家族のこと、学校での楽しかった話…
気付くと20時を過ぎようとしていたので、陽奈子は慌てて帰ろうと身支度を始めた。
「送っていこう」
「今日は大丈夫だよ!タクシー拾ってく!」