第20章 しんあい *
痛みを耐え抜き、2人目も無事に産まれてきてくれた。
「ふぎゃぁ~っ、ふぎゃあっ!」
「おめでとうございます!お父さん、お母さん。」
布にくるまれたわが子達が胸元に預けられる。
小さくて、ぞもぞと私の胸で動く子供達の重みが軽いはずなのにとても重く感じる。
子供達に視線を向けると感動と安心感で笑みが溢れた。
「っ、かわ、いい…」
「よく頑張ったな、陽奈子」
我が子よりも先に私の頭を優しく撫でてくれる大きな手が、いつも以上に温かく感じる。
「お父さんも抱っこ、してあげて下さい」
助産師さんに産まれたばかりのふにゃふにゃの赤ちゃんを逞しい腕にそっと託される。
両腕に預けられた小さな子供達を緊張しながら抱き抱える。
「…小さいな。小さいのに…重く感じる…っ、」
子供達に視線を向けていると、くるまれた布に雫が落ちる。
それに驚き視線を杏寿郎に向けると、その瞳からは綺麗な涙が頬を伝っていた。
「杏寿郎…泣いてる、の?」
「っ!?…よもや…まさか俺が泣かされるとはな…っ、陽奈子、ありがとう…こんなにも尊くて愛おしいく…そう思える宝物を君から貰ったようだ…本当にありがとう、よく頑張ってくれた」
涙を伝わせながら、眉を下げて微笑む杏寿郎を見て、私も釣られて泣いてしまう。
「っぐす…もう、釣られちゃうじゃん…」
杏寿郎の頬を伝う涙を指で拭う。
いつか思い描いていた、杏寿郎が涙を流したら…私がそれを拭ってあげる。
その小さな夢が今、叶ったのだ。
産後、私の身体も順調に回復していき、慣れない授乳やオムツ替えも助産師さんに教えて貰いながらこなしていた。
杏寿郎は毎日病院に顔を出して、子供達の日々変わっていく表情に驚きつつもすごく喜んでくれていた。
退院すると、病院にいた時とは違ってわからない事が沢山あった。それでも杏寿郎と協力し合って、慣れないオムツ替えや授乳を交代でこなしていった。
仕事で疲れている筈なのに、産後の私をずっと気に掛けてくれて「君は少し寝なさい」と優しい言葉をかけてくれた。
その優しさに感謝しつつ、休める時は休むよう心掛けた。
杏寿郎と一緒に育児をこなしていくと、あっという間に半年が経った。