第20章 しんあい *
陣痛らしき間隔は10分くらいになってきて、病院に連絡を入れるとすぐに来るようにと言われた。
病院に着き、個室へと通される。
そこからが長かった。
家にいた時より痛みが増していて、何度も何度も押し寄せる波を必死に耐える。
「っ…ふぅーっ…」
「痛むか?…ゆっくり深呼吸だ、陽奈子」
陣痛に耐えている間も痛む腰を擦って、少しでも私が楽になるようにずっと側にいてくれた。
波が一旦引いた。そのタイミングで素早く飲み物を渡し、額の汗を拭ってくれる。
「…すまない、君ばかりこんなに辛い思いをさせてしまって。出来れば変わってやりたいくらいだが…」
「はぁ…大丈夫だよ。痛いけど…でもこの子達も頑張ってるから。それに杏寿郎が側に居てくれるもん、辛くないよ。」
そっと私の頭を撫でて目を細めて微笑む。
「ずっと側にいる。痛みを分かち合うことは出来ないかも知れないが、全力で君のサポートをさせてもらう。だから一緒に頑張ろう!」
「ありがとう!心強いし、嬉しい…私、頑張ってこの子達産むから。側で見守っててね?」
「やはり君は頑張り屋だな!勿論だ、後少しだ。頑張ろう!」
数時間経って子宮口が全開になったから分娩室へ入る。分娩台に横になると助産師さん達の声掛けのタイミングでいきむ。
その間、ずっと私の手を強く握って側で励ましてくれる杏寿郎。
「うっ…んぅぅ~っ!!」
「陽奈子っ、頑張れっ!もう少しっ…」
いきむと助産師さんがまた声を掛ける。
「そうそう、お母さん上手よ~!ほら、頭見えてきましたよ~」
「頭が見えてきたそうだ!もうじき会えるぞっ!」
「はぁはぁ…う、ん……うっ、んんーーっ!!」
もう一度思い切りいきむと、元気な産声が聞こえてきた。
「ふ、ぎゃぁ~っ、ふぎゃ~っ!」
「おめでとうございます!一人目は男の子ですよ!もう少し、頑張りましょう」
「陽奈子っ、男の子だそうだぞ!…もう少しだ、頑張れ、頑張れっ!!」
助産師さんの言葉を復唱するように声を掛け、額の汗を拭ってくれる。聞こえてるのに、こんな時もやっぱり杏寿郎らしい。
「お、とこの子…よかった…」
その元気に泣く産声にホッとしていたのも束の間で、また激しい痛みが襲ってくる。