第20章 しんあい *
ポコッ
すると、それに答えてくれたかのように小さく動いてくれた。
「っ!!!陽奈子!今、動いたぞ!?動いた!動いてくれたっ…」
「ふふっ、そうだね。やっとパパだって分かってくれた?」
互いの手でお腹を撫でると、また小さくポコポコと動いてくれた。まるで返事をしているみたい…それが嬉しくてまたお腹に視線を向ける。
初めて胎動を確認できた杏寿郎は嬉しさと驚きが入り交ざった、そんな表情をしていた。
会える日が早く来ないかな…
早く杏寿郎に抱かせてあげさせたい…
どんな顔でこの子達を、その腕に抱くんだろう?
そんなことを考えながら、ずっと幸せそうな顔をする杏寿郎を見つめた。
あっという間に臨月に入った。
その後は時間がとても短く感じるくらい過ぎ去った。
そして予定日が数日過ぎた。
なかなか陣痛が来なくて私は少し不安になっていた。
ベッドに横になって、杏寿郎は私を抱き締めてくれる。
悪阻が過ぎてから杏寿郎の匂いを不快と感じなくなり、私の大好きな匂いに戻っていてすごく嬉しかった。前以上にもっともっと、この匂いが大好きと思うようになっていた。
髪に指を通しながら優しく頭を撫でながら杏寿郎が口を開く。
「そう不安そうな顔をしてくれるな、大丈夫だ。きっとこの子達は君の腹の中が居心地がいいのだろう…」
「そうかな…それはそれで嬉しい気もするけど…私は早く会いたいなぁ…」
「俺も待ち遠しくはあるが…こればかりは、この子達のタイミングというもの、あるだろうしな…」
小さく笑って、大きく真ん丸になったお腹を撫でる。
そうされているうちに、自然と目蓋が重くなっていって眠りについた。
少し経ってから、少し鈍い感じのお腹の痛みで目が覚めた。
「ん…」
起き上がってそっとベッドから出ようとしたところで、杏寿郎に腕を掴まれた。
「どうした?」
「ごめんね、起こしちゃった…少し、お腹が痛いの。これって陣痛…なのかな?」
「っ!?よもや、こうしてはおれんな!!」
すぐに布団を剥いで飛び起き、携帯を手に取ると私にまた痛みが来たら教えるよう言われた。
杏寿郎の方が私より焦っている気がする。
携帯を片手に今か今かと、その場を行ったり来たりを繰り返す。