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し ん あ い【鬼滅の刃/煉獄/R18】

第20章 しんあい *




「ちが…うの…違うの!杏寿郎は悪くない…私、私っ…」


きっと杏寿郎は私が匂いに敏感になっていることを理解してくれたんだろう。泣いている私を抱き締めることなく、背中を何度も擦りながら「大丈夫だ」と言ってくれる。



「大丈夫、じゃないよっ…杏寿郎は頑張ってる、のにっ…私は何も出来なくて…何かしようと思っても、思うように行かなくて…」


「君のその言葉だけで十分だ。今は大事な時だろう?家事も俺がやるから、君は休んでいてくれ」



その言葉が嬉しい。
嬉しいはずなのに、どうしてか苛立ってしまう。



「そんな…そんなこと分かってる!大事な時だって…大切にしなきゃってっ!でもっ、1日横になってることしか出来ない自分が嫌なのっ!!」


「陽奈子…」


「っ、ごめ…今は、一人にして…」



つい怒鳴ってしまった。やり場のないこの気持ちを杏寿郎にぶつけてしまった。八つ当たりだ。


私…最低だ。



「すまない…」



すっと、立ち上がった杏寿郎は消えそうな声で一言謝ると家から出ていった。



なんでこんなことで苛立ってしまうんだろう。悪阻がない杏寿郎を羨ましく思ってる?いや、そんな事じゃない。

ただただ、何も出来なくて…何かしたいのに出来ない。その自分自身にイライラしてしまうんだ。



どうしようもなく、悲しくてまたその場で涙を流した。






暫くして、玄関ドアが開く音で目が覚めた。
あのあとなんとか身体を引きずってベッドに横になるといつの間にか眠っていたみたいだ。


杏寿郎にちゃんと謝らなきゃ…


そう身体を起こそうとすると、杏寿郎に制されてしまう。


「陽奈子!無理はしなくていい。…すまない、君が辛いのに、何もしてやれなくて…」


「ちがっ…杏寿郎…さっきは怒鳴ってごめんなさい…完全に八つ当たりだった…本当にごめん、なさい…」



何度も謝ると頭をポンっと撫でられた。視線を杏寿郎に向けると、少し眉を下げて苦笑しながらビニール袋を差し出してきた。


「謝らなくても大丈夫だ。辛い時は辛いと言ってくれ。俺も初めての事でわからない事が多い…だから、不死川の所へ言って色々聞いてきた!」


袋をガサッと広げて中身を見せてきた。
ゼリーや季節外れの素麺、リンゴジュースや私の大好きなグレープジュースが入っていた。

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