第20章 しんあい *
~夢主side~
杏寿郎が何を考えているのか、わかってしまった。
「杏寿郎」
「んむ?なんだ?」
「杏寿郎が考えてることくらい分かるから。きっと…その…暫くは、あれが出来ないって、そう思ってるんでしょ?」
あれと言うのは、勿論あれな訳で。
それが出来ないとなると困る。と言いたげな顔をされる。
「あれ、とは…そうなんだが…いや、嬉しい気持ちは本当だぞ?だが…これからは君を独り占め出来る時間が限られると思うと…少々、腹の子達に妬いてしまうぞ?」
「もう!今からそんなこと言っててどうするの。自分の子に嫉妬するなんて…杏寿郎らしいけどね?」
少しシュンとした杏寿郎の頬に軽くキスを落とす。
すると「そっちじゃないだろう?」と自分の唇を指指す。
「もう、子供みたい…ふふっ」
そっと口付けるとまた微笑み合った。
すごく幸せ、早くこの子達に会いたいと今から待ち遠しく感じた。
だけどその幸せな気持ちよりも、もっと辛い時間が待っているなんてこのときは思わなかった。
クリスマスから数日。
起きていても、眠っている間さえ吐き気に襲われてよく眠れない毎日。
お店にすぐに報告して、しのぶちゃんや蜜璃ちゃん、皆が喜んでくれた。
『おめでとうございます!自分の事のように嬉しいです。』
しのぶちゃんにそう言われて、すごく嬉しかった。早く皆に写真見せてあげたいなって思ってた。
だけど、こんなになるなんて思ってもなくて…もちろん、仕事をまともに出来る状態じゃなかったから暫くお休みを貰うことになった。
「うぅ…気持ち悪、い…」
「陽奈子…すまない、側にいてやることが出来なくて…何か欲しいものがあったら連絡してくれ」
横になっている私の背中を優しく擦ってくれる。杏寿郎は仕事がある。それを引き留めるわけには行かない、こんな弱気になってちゃダメだ、と精一杯の笑顔を向けて杏寿郎を送り出した。
あれからどれくらい時間が経った…?
時計を見るともうお昼近く。何か食べなきゃと思うけど、とても食べれる気分じゃない。
その上、自分の唾液ですら不快で仕方がない。