第20章 しんあい *
~煉獄side~
陽奈子をそっと抱き締める。
あぁ、なんて幸せなのだろう…
陽奈子と夫婦になれたことさえ嬉しいというのに、俺たちのところへ来てくれた子がここに…
「陽奈子、本当にありがとう…今まで以上に大事にする、君のことも…この腹の子も」
そっと腹を撫でるとくすりと小さく陽奈子が笑ってエコー写真を指差す。
「お腹の子、じゃないよ?よく見て…」
陽奈子の言っている事を不思議に思い、再びエコー写真に視線を移す。
それを愛おしくなぞって見つめる陽奈子はまた口を開いた。
「私達のところに来てくれたのは、2人…双子だよ」
「よ、よもっ!?ふ、双子っ!?」
只でさえ、授かった事に驚いているのに。まさか双子だなんて思ってもない言葉に二度目の驚きでつい立ち上がってしまった。
「ふふっ、驚いた?」
「驚いたに決まっているだろうっ…そう、か…双子か…俺は2人の父親に、なるのだな…」
落ち着かせるようその場をグルグルと歩き回る。それを笑って見つめる陽奈子に両手を握られ下から見上げてきた。
「初めての事できっと不安も多いと思う。だけど杏寿郎とならきっと乗り越えられる、どんな事があっても」
「陽奈子…そうだな。すまない、君にそんな事を言わせてしまった…俺が支える側なはずなのに」
「うぅん、きっと杏寿郎も同じ気持ちでいてくれてるって分かってるから。それに支える側じゃなくて、私にも支えさせてよ?一人で頑張ろうとしないで、2人で支え合って…この子達、育てていこう?」
既に母親らしい台詞を口にする陽奈子に、不甲斐ないと思いながらも、その言葉に胸が熱くなる。
「あぁ、そうだな。…俺達ならきっと乗り越えられる、どんな事でも。」
頬に手を添えて、そっとキスを落とすと額同士をコツリと合わせ微笑み合う。
幸せだ。
言葉にならないくらいに…
だが、困ったことがひとつある。
それは……
考えていることを悟ったようで、陽奈子がムギュっと俺の両頬を寄せる。