第2章 好きの違い
「頑張っているな、陽奈子!差し入れだ!」
「きょ、…じゅ、ろう…」
こんな落ち込んでるタイミングで来るなんて…
本当に私のことを照らしてくれるお日様みたいな人。
思わず泣きそうになってしまう
「よもや!どうしたのだ!?何かあったのか、陽奈子!?」
「な、なんでもないよ!ただ、ちょっと目にゴミが…それよりも、その差し入れは何?食べ物かな?」
泣きそうになったのを堪えながら、話を逸らす。
変な心配をかけたくないから。
「陽奈子が好きだと言っていた、グレープジュースとさつまいもを使ったどら焼だ!!」
嬉しそうにそれを袋から出す杏寿郎。
「(組み合わせが独特…)あ、ありがと!でもなんで…?」
練習していることは前に話をしたことがあったが、毎日しているとは言っていなかった。
なのにどうしているとわかったのか…
「うむ!ちょうど走っていたら店の前を通ってな。明かりが点いていたので、差し入れでもしようと思ってな!頑張っているみたいで何よりだ!休憩でもしないか?」
なんでこんなに優しくしてくれるのかな?妹みたいだから?
つい甘えてしまいそうになる…
誰にでも優しい人だもん、杏寿郎はそういう人だ。私だけってわけじゃない。
そんなことを考えていると「どうした?食べないのか?」と、こっちを少し心配そうに見つめてくる。
「…ううん!食べる!!ちょうど休憩しようと思ってたんだ」
椅子に座ってどら焼を頬張る。
甘い味が口一杯に広がって、幸せな気持ちになる。
「ん!おいしい!やっぱり甘いものは癒されるね!ありがとう!」
「うむ!やはり君には笑顔が一番似合う。少しは元気が出たか?」
痛いところを突かれる
「なんだ、気付いてたの。…うん、なんかさー、今日は何をやっても失敗ばっかりで…上手くいかなくてちょっと気持ちも落ち込んでたの。」
全部見透かされていたのだ、と思うと口からボロと心の声が漏れていく。
「そういう時もある。俺も仕事で失敗するときだってあるぞ?誰でも失敗なんて付き物だ、失敗するから学んでいくものだろう?」
確かに杏寿郎の言う通りだ。
くよくよしていた自分がバカらしくて、少し笑える。
「そう、だね!こんなの私じゃないね!ありがとう、杏寿郎!」
その時、杏寿郎の髪が夕日に照され綺麗なオレンジ色をしているのに気付く。