第2章 好きの違い
お風呂を上がり終えると、スマホが光っているのに気付く。
『さっき家に着いたところだ!陽奈子はもう寝てしまったか?また今度な、おやすみ』
「あの短時間じゃお風呂とか済ませれないって、女子を分かってないなー。さすが杏寿郎!」
その文面をみてくすっと笑う。
何て返信しようかなっと考えていると、既に日付が変わっていることに気付く。
明日の仕事に支障を来さないよう、『送ってくれてありがとう!おやすみなさい』と短文で返信して寝ることにした。
歓迎会から何日か経ったある日の夕方。
私はまだ、自主練を続けている。
今日も、一人残って練習をしていた。
最初はしのぶちゃんに付き合ってもらっていたけど、毎日は申し訳ないと思い、練習に付き合うのはどうしてもってお願いした時だけとなった。
教えてもらえるのはすごくありがたいんだけど、やっぱり気を遣っちゃうから…
「さて、今日もやりますかー…えっとまずはフォームミルクの練習だね。」
独り言をぶつぶつ言いながら練習を進めていく。
「……」
練習を初めて少し経つと連日の疲れなのか、あくびが出てしまう。
「…ふわぁ~…」
あくびをした瞬間、牛乳を派手に溢してしまった。
「ぅわぁあぁ!!!…やっちゃったよー、はぁー…ついてないな…」
急いで布巾を取りに行く。
と、テーブルの脚に自分の足を引っ掻けて派手に転んでしまった。
「…ぃっ、ててて…もー、何やってんの私…」
実は今日は失敗続き。
お客さんにお冷を出すときに溢してしまったり、オーダーを間違えてしまったり、お釣りを多く渡してしまったり(親切なお客さんだったから還して貰えたけど)ともう失敗ばかり…
しのぶちゃんには「今日の練習はお休みにしたらどうでしょう?連日で疲れてるのでは?」と止められたけど、失敗した分頑張らなきゃって気持ちが強くてやることにした。
結果、また失敗。
「はぁー…今日は片付けて帰ろうかな…」
そう落ち込みながら片付け始めようとすると、お店のドアベルが鳴る
カランカラン
「(あれ?誰かな…?)」
床を掃除していたので分からず、確認するために立ち上がるとそこにいたのは…
小さなビニール袋を片手に持って、にかっとお日様のような笑顔を見せる杏寿郎がいた