第2章 好きの違い
「あぁ、富岡も学校が一緒だったのでな。卒業と同時に自分の店を開くと言っていたので、今では俺たちもあの店の常連なのだ!」
「あ、そうなんだ!みんな繋がりがあったんだねー、あ!ここで降りるよ」
気付くと最寄りの駅に着くところだった
電車を降りると人はまばらだ。
それもそうだ、時刻は23時過ぎだ。
少し暗い街灯がいくつか並んでいる道を歩く。
「こんな暗い夜道を一人で帰ろうとしていたのか?君は危機感がないな!」
「え?そうかな?いつもなら人が歩いてるんだけど、今は時間も遅いからね」
「それでも危ないだろう。君は女の子なんだから、もう少し気を付けなさい!」
なんだかお父さんみたいな杏寿郎に少し笑ってしまう。
「はーい、おとーさん?」
冗談っぽく笑ってみせる。
「俺がいつ君の親になったのだ?歳は一つしか違わない、せめて兄上だろう!」
「(えー、冗談なのに歳のこと気にすんのー?)あにうえ?もしかして、弟さんも杏寿郎のことそう呼んでるの?」
「うむ!あと、父上と呼んでいるぞ!」
変わった呼び方するんだな、武士みたい…
「あ、ここだよ!ありがとう!送ってくれて!」
「うむ、部屋に入るまでここにいる。早く入りなさい」
過保護だなーって思いながらもその言葉が嬉しくて、広角が少し上がりながら階段を上がり、部屋のドアの前で止まる。
ちょうど覗き込めば杏寿郎がこちらを見ていて、それに気付いたのか手を上げる。
「あーりーがーとー!!気をつけてねー!」
夜中なのに叫んでしまった。
杏寿郎は苦笑いをしながら、人差し指を口元にあてて「静かに」と言っているようだった。
部屋に入ると明かりをつける。
カーテンを閉めようと窓に近付くと、薄明かりでも目立つ金色の髪を揺らしながら歩く姿が目に入る。
角部屋なので杏寿郎があるいているのがよく見えた。
「…優しいな。後でちゃんと家に着いたかメールしてみよう!」
さっきの歓迎会でみんなと連絡先を交換したのだ。
今のうちにお風呂に入ってしまおうと、支度を始めた。