第19章 誓いと常夏の島 *
結局、度数がかなり強そうなお酒を差し出された。それでも「ありがとう!」と嬉しそうに一言、それを受け取ってグラスに口を付けた。
勢いで一気に飲み干しそうと思い、止めようとしたけど間に合わず…
気が付けば空になったグラスが私の目の前にあった。
この後、酔いつぶれてしまわないか…
まぁおめでたい日だし、たまには羽目を外してもいっか。
そう思いながら、楽しそうにしている杏寿郎の横顔を眺めた。
後に「たまにはいいか」と思った自分に後悔するなんて、思いもせずに…
ふとテーブルに視線を移すと、オードブルが幾つか置いてあってその近くにフレンチトーストが一口サイズにカットされてある。可愛くて加工されていて、ハート型になっているそれをお皿に取り、パクリと口へ放り込む。
ほんのりとした甘さが広がって、つい頬も綻ぶ。
もうひとつ口に運ぼうとしたところで、杏寿郎が顔をずいっと近付けて来た。
「何を食べているんだ?」
「フレンチトースト。ハートになってて可愛いの!」
「うむ、本当だ!では俺もひとつ頂こう」
食べようとフォークに刺していた、フレンチトーストを大きな口でパクリと食べてしまった。
「こ、こっちにありますけど!?」
「君から食べさせて貰いたかった!う~ん、…何かが足りんな…」
顎を掴み、足りないものが何なのか考えている。
確かに足りないものがあるかもしれない。でも、私はこのままでも十分美味しいと思うけど…
「なるほど!!」
足りないもの、それが何なのか閃いたようでフレンチトーストの側にあったボトルを手に取る。
「これだな、足りないものは!」
「あ、はちみつ。そう言えばかけてなかった。でもこのままでも…んぐっ!?」
杏寿郎に顔を向けると口の中へフレンチトーストを押し込まれた。
「うまいだろう?」
「んん…お、おいしいです…だけど不意打ちは止めて…?」
「むっ、なぜだ?」
「いや、いきなりはびっくりするし、それに…ひゃあ!?」
話の途中で、口端をペロッと舐め上げられたせいで変な声が出てしまった。
慌てて口元を手で覆い、杏寿郎を見ればとても満足げに口角を上げていた。その頬は少し赤く染まっている。