第19章 誓いと常夏の島 *
綾ちゃんとの思い出や祝福の言葉に涙が止まらない。
そんな私を隣の杏寿郎はずっと背中を擦ってくれていてた。
「あり、が…ぐすっ…と、もう大丈夫だから」
「綾少女も、なかなかいい話だったな!俺もぐっと来るものがあったぞ!」
「私ばっかり泣いてる…杏寿郎も泣いてくれてもよかったんだよ?」
「俺は泣かない!感動はしたが。男がメソメソと泣くのは格好がつかんからな!」
この先、杏寿郎が涙を流す程、感動することはあるのかな…
今まで一度も見たことないから、見てみたいと思ってしまう。
そんな時がいつか見れたなら、その時は私が涙を拭ってあげよう…
そんな事を密かに想い描いた。
披露宴も半ばに差し掛かり、お色直しをする為に中座することに。
先に私がお兄ちゃんと郁茉に手を引かれて会場を後にする。
まさかお兄ちゃんが泣くとは思わなくて、私も釣られて泣いてしまう。それを見た郁茉も堪えていたものが爆発するように号泣してしまった。
「にーちゃんもっ…ねーちゃんも泣きすぎ!」
「郁茉の方が私達より泣いてるじゃん…」
「俺達兄弟は、泣き虫だな!」
お互いの泣き顔に、くすりと笑い合った。
その後から杏寿郎は千寿郎くんと仲良く手を繋いで出てきた。
「こうやって千寿郎と手を繋ぐのも、いつ振りだろうか?」
「幼い頃は兄上によく手を引いて貰いましたね!久しぶりに手を繋ぐことが出来て、とても嬉しいです!」
「うむ!兄も嬉しく思うぞ!」
微笑み合う2人の会話が嬉しくて、私もつい笑みが溢れた。
タキシードとドレスから、和装へと着替える。
杏寿郎の和装…すごくかっこいい。
見惚れていると、こっちに気付いた杏寿郎が「似合うか?」とくるりと回って見せた。
「うん、すごくかっこいい!タキシード姿も格好よかったけど、白の袴もすごく似合ってる!」
「そ、そうか?そんなに誉められるのも悪くはないが…少し照れてしまうな。」
照れ消さそうに頭をガシガシと掻く杏寿郎。
折角綺麗に纏めてもらったのに、少し乱れてしまった。
「杏寿郎、少し屈んで?直してあげるから…」
「む?こうか?」
私と同じ目線に屈むと、崩れた髪を整える。
ふわふわの柔らかい髪から手を離すと至近距離で杏寿郎と視線が合った。