第19章 誓いと常夏の島 *
~夢主side~
祭壇の前に立つ杏寿郎の側まで来ると、今まで以上に優しくて暖かいお日様のような笑みを浮かべていた。
その表情に胸の奥がきゅぅっと熱くなった。
あぁ…本当に、杏寿郎のお嫁さんになれるんだ。
そう思うだけで、目頭が熱くなる。
杏寿郎の腕に手を掛けて、祭壇前まで進むと牧師さんの言葉で式が進んでいく。
リング交換。
私達はゲストの皆に参加して貰いたくて、リングリレーをセレモニーとしてお願いしていた。
両側のゲスト席にそれぞれ1本の赤いリボン。
そのリボンを使って後ろから前へと指輪を送って貰う。
指輪が私達の元へと届くと、互いに指輪を贈り合う。
私から杏寿郎の左薬指へ、ゴツゴツとしたその指にキラリと輝く指輪。
そして、杏寿郎から私の左薬指へ指輪を通される。
その上から、エンゲージリングを通す。
愛をロックするように…
私の薬指には、キラキラと輝く2つの指輪。
どちらも杏寿郎から贈られた、大切な贈り物。
「では、花嫁にキスを」
牧師さんの一言でぎこちなさはあるけれど、それでもゆっくりと丁寧にベールを上げられる。
その左腕には、お義父さんから贈られたアンティーク調の腕時計がキラリと光っている。
顔を覗くと、杏寿郎は今までで一番の幸せに満ち溢れた笑みを浮かべていた。
その優しくて、暖かい眼差しに微笑み返すとそっと目蓋を閉じた。
優しく唇を重ねられる。
数秒、キスを交わし、ゆっくりと離れると杏寿郎の頬はうっすらと色付いている。
「ふふっ」
「な、なんだ?」
「人前でキスなんて、照れちゃうね?」
「そうだな…俺としてはもう少ししていたいところだったがな!」
そんな事を言いながらも、本当は人前でするのが恥ずかしいんだろうな。
お義父さんもお義母さんも、千寿郎くんも…皆に見られてるんだもん。
でも、こんな風に照れてる杏寿郎もまた愛おしいと感じる。
これから、もっともっと色んな表情を側で見れる。
もっとたくさんの幸せな思い出を…
幸せな家庭を杏寿郎と築いて行きたい。
ずっと、いつまでも…
私の隣で笑っていて欲しい。
照れ臭そうにして、微笑んでいる杏寿郎の顔を見つめながら、そう願った。