第19章 誓いと常夏の島 *
~煉獄side~
俺は今、心臓が止まってしまうかと思った。
目の前に純白なドレスを身に纏っている、陽奈子があまりに綺麗で…
今日は待ちに待った、結婚式当日。
あれから数ヶ月。
時の流れがとても短く感じる程、毎日が慌ただしく過ぎ、あっという間に当日になった。
本来であれば新郎の俺がドレスの試着に付き添うはずだったのだが、陽奈子が「当日まで楽しみに取っていて欲しい」と言われたので、今日までドレス姿を拝まずにいたのだが……
「…どう、かな?」
「………」
「杏寿郎?…変、かな?」
「っ!い、いや!!そんな事はない!!そのっ…」
あまりに陽奈子の姿が綺麗で、上手く言葉が出てこない。
この気持ちをどう言葉にすればいいか悩んでいると「やっぱり、ちゃんと見て貰ってからがよかったかな…」と少し不安げな声音でボソリと呟く。
「ち、違うんだ!!…その…言葉を失ってしまう程、君があまりにも綺麗で…なんと言っていいか、言葉に迷ってしまって」
「…ふふっ。そう?それなら、よかった!どうかな?裾に散りばめられた、大振りの刺繍が可愛くて一目惚れしたの!」
ドレスの裾を摘まんで、得意気にクルリと一回転して見せる。
「うむ!よく似合っている!人目に触れさせるのが、惜しいくらいだ…」
「惜しいくらいって…皆来てくれてるんだから、お披露目しなくちゃだよ?」
「分かっている!だが、どうしても独り占めしたいと思ってしまう。今この瞬間だけは俺だけの為によく見せてくれ…おいで」
そっと手を握ると、腰を引き寄せた。
今にも唇が触れそうなくらいな距離で瞳を見つめる。
「きょ、杏寿郎!?…んんっ!?」
「なんだ?」
そっと唇を重ね、離れると頬を染めて恥じらう。
「だ、だって…口紅が付いちゃうから…」
「構わない…本当に綺麗だ、俺の花嫁は…」
そう言ってまた唇を重ねる。
それと同時にドアをノックする音に、反射的に身体が離れる。
「失礼致します。会場へご案内致しますので、よろしいでしょうか?」
ドア越しからスタッフの声がして、慌てて距離を取る。
「は、はいっ!!」
ドアが開くとスタッフが2名入ってきて、身支度の最終チェックをしてくれた。