第18章 代わり映えのない日々に花束を
「っ…ロマンチスト…でしょうか?」
「なかなかお前もやるな!うむ、式はここにしたらどうだ?2人の思い出の場だろう!」
「あなた…それは2人が決めることですよ?そんな言い方をしてしまっては、断りづらくなってしまいます。」
母上がそう言うと、父上はぐぅっと黙り込んでしまった。
やはりあの父上でも、母上には敵わないのだろうな。
「ごめんなさいね?陽奈子さん。この人の事は気にせず、好きな場所でいいのですよ?一生に一度しかないことなのですから」
「い、いえ!そんなことないです!…私も、ここがいいと思ってましたから…杏寿郎、ここでもいいかな?」
「勿論だ!陽奈子がそこがいいと言ってくれて、俺は嬉しいぞ!」
小高い丘の上にある、その小さめなチャペル。
辺りは木々が生い茂っていて、静かな場所。
そこで陽奈子と式を挙げられたらと、そう思っていた。
だから、ここで挙げたいと言ってくれて本当に嬉しい。
「ここで決まりだな!後は日取りか…今からなら秋頃がいいんじゃないか?」
「あなた、2人の話なんですから。それは2人に任せたらどうですか?少しはしゃぎすぎですよ。」
「す、すまん…つい。では、詳細は2人に任すとしよう。」
こうして式場は決まった。
これからまた一気に忙しくなる。
それも喜ばしい事だから、全く苦ではないが。
隣にいる陽奈子も式を楽しみに、嬉しそうに微笑んでいた。
一通り話が済んで、帰る頃には夕方になっていた。
「お邪魔しました。これからご迷惑かけることもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。」
「いいのですよ。貴方はもう私達の家族ですから、気にせず何でも言って下さいね?」
「お義母さん…ありがとうございます。では、皆さんまた!」
そうして、別れを告げて帰ろうとした時、父上に耳打ちをされた。
「杏寿郎、孫はいつ見れる?」
「っ!?ち、父上!?」
「ハッハッハ!そんなに驚く事はないだろう?励むといい!」
そう言ってまたバシバシと背中を叩かれた。
お義父さんといい、父上といい…
そんなに孫を見たいものなのだろうか。
いつか、俺と陽奈子の間に新しい命が…
そう考えるのも、遠くはない話だろう。
父親になった自分を想像するのも、また楽しみと思えた。