第18章 代わり映えのない日々に花束を
家に戻ると陽奈子が心配そうに駆け寄ってきた。
「遅かったね…?もしかして…投げ飛ばされでもしたの!?」
「い、いや!そんな事は…ないが…」
「そう…なの?お父さんならやり兼ねないと思ってたから、安心した…」
そう言って苦笑している陽奈子。
何があったかは言えないが…正式に結婚を認めて貰えたことを伝えると、とても嬉しそうに、少し恥じらいながら「よかった!」と笑みを溢した。
それから緋里家の皆で一足早めの祝杯を上げていると、陽奈子がお義母さんに呼ばれて別室へと行ってしまった。
暫くして、別室へと行ってしまった陽奈子が戻ってくると、その手には細長い箱を抱えていた。
ジュエリーケースのような箱。
それを大切に胸に抱き抱えるようにして戻ってくると、俺の横に座る。
「その箱はどうしたんだ?」
そう聞くと、嬉しそうにその箱を開けて中身を見せてくれた。
そこには、真珠のネックレスが入っていた。
「お母さんが…これを私にってくれたの…綺麗だよね。」
真珠のネックレスを手に取って、それを大事そうに眺める。
「お義母さんが…?」
「うん。いつか私の結婚が決まったら、これを渡そうってずっと思ってたんだって。」
「そうなのよ。そのネックレスはね、私が結婚式の時に着けてたものなの。だからいつか娘が産まれたら、その子の結婚式にもそれを着けて欲しいなって…身勝手な願いだけどね?」
小さく微笑んで、陽奈子と俺を優しい眼差しで見つめるお義母さん。娘を想う、母としての気持ちにじんわりと心が暖かくなった…
「うぅん!すごく素敵な願いだよ、お母さん!私、すごく嬉しい…」
それを着けたウェディングドレス姿の陽奈子を想像する。
絶対に綺麗だろうな…とそんな事を考えるだけで、式が楽しみになった。
陽奈子の実家を後にして、家に着くと早速貰ったネックレスを着けて見せてくれた。
「似合うかな?」
「うむ!よく似合っている!ウェディングドレスを着て、それを着けた君が見れるのが待ち遠しいな…」
ネックレスに触れながらそっと距離を詰めると、陽奈子の唇を指でなぞり、互いに瞼を閉じた。
これから先の幸せな日々に胸を膨らませ、甘い時間を過ごした。