第18章 代わり映えのない日々に花束を
「そうだったろうな…俺を見つけた途端、また激しく泣いて「お父さん!お父さん!」ってね。下ろしてやってからもずっと泣きっぱなしだったから、おぶってやったら……」
そこで言葉に詰まり、黙ってしまった。
よく見ると、お義父さんの肩は小さく震えていた。
「…!お義父さん…」
「すまない…それであいつが言ったんだ「大きくなったらお父さんと結婚する!」って…小さくて可愛い陽奈子が…っ、こうして運命の人と巡り合えた…俺は幸せだよ。父として、娘の幸せを心から願っている…だから、どうか娘をよろしくお願いします。」
振り返ったその頬には涙が伝っている。
深々と頭を下げて、その大きな体からは想像も出来ない程の小さく震える声でそう言った。
「お義父さん…どうか、頭を上げてください。」
「すまないね…こんな姿を見せたかった訳じゃなかったんだ。でも、どうしても君をここに連れてきたかった…陽奈子は時々、突っ走って無理をすることもあるだろ?だから、杏寿郎くんには側で見守っていて欲しい。これからも陽奈子を大切にしてくれ。これが俺からの…父としての願いだ!」
涙を拭いながら、そう笑って言った。
「勿論です!必ず陽奈子さんを幸せにすると誓います」
「そうか…ありがとう、杏寿郎くん。さて、帰って飲むとするか!」
スタスタと歩いていく後ろ姿は、もう小さくはなく、いつものように逞しい父の背中だ。
「何してるんだ?ほら、行くぞ息子よ!…あ、今の事は内緒だぞ?特に母さんだな。絶対にからかってくるし…あ、式はいつなんだ?どこで挙げる予定だ?あ、そうだそうだ!孫はいつ見れる?!」
「お、お義父さん…気が早いですよ…」
肩を組んでバシバシと叩かれながら、質問責めにあう。鍛えてるだけあって、若干痛い…
だが、それも嬉しいものだ。
こうして結婚を許して貰えたと同時に、"家族"として受け入れて貰えたと言うことだ。
息子と言って豪快に笑う表情は、どことなく父上に似ている気がした…