第18章 代わり映えのない日々に花束を
~煉獄side~
無事にプロポーズを終えてから1週間。
今日は陽奈子の実家へ、挨拶に来ている。
同棲の許しを貰ってから久しぶりに訪れた陽奈子の実家だったが、皆喜んで俺達を出迎えてくれた。
「それで、今日は…って、聞かなくても大体分かってはいるけどね!杏寿郎くんの口からちゃんと話して貰いたい。」
お義父さんにそう言われると、姿勢を正して真っ直ぐと見つめ直す。
「先日、僕からプロポーズをしまして、陽奈子さんから了承を頂きました。まだまだ未熟な私ではありますが、陽奈子さんと協力し合って、温かい家庭を築いていきたいと思っています。お義父さん、お義母さん、どうか私たちの結婚をお許し下さい!」
そう言って深々と頭を下げて、返事を待つ。
暫くしてお義父さんが口を開いた。
どのくらい経ったのだろうか…
いや、きっと数分だったとは思うが、俺にはその時間さえもとても長く感じた。
「杏寿郎くん。ちょっと俺と出掛けよう。陽奈子、お前はここで待つように」
「え?…あ、はい…」
心配そうに見つめる陽奈子に「大丈夫だ!」と言うように視線を送り、お義父さんと外へ出た。
ただ一言「着いてきてくれ」と言われ、お互い無言のまま歩く。
暫くすると、小さな丘までやって来た。
そこには何百年ともあろう立派な巨木があった。
「杏寿郎くん、ここに座ってくれるか?」
「は、はい!」
側にあったベンチへ、2人並んで腰を下ろす。
そしてお義父さんが巨木を見つめながら口を開く。
「陽奈子が小さい時、この木に登って降りられなくなってしまったことがあった…」
「こんな大きな木に…?」
「あぁ。あいつは幼い頃、本当に男の子みたいでよくヤンチャばかりしていたよ。」
こんなに大きな木に子供が登ったら、1人で降りることは困難だっただろう…
「1人で遊びに行くと出掛けて、夕方になっても帰って来なかったから探しに来たんだ。そしたら、こんな所に登って下りられず泣いていた…周りに家はないし、人通りも少ない場所だから、誰も助けに来れなかった。」
「それは心細かったでしょうし、とても怖かったでしょう…」
そう言うと、お義父さんがすっと立ち上がり、その巨木に触れる。