第18章 代わり映えのない日々に花束を
ゆっくりと目を開けると、目の前には重厚感のある大きな扉があった。
「こ、こって…もしかして…」
辺りを見回すと、どうやらここはチャペルみたい。
ぼぅっとしていると、まきをさんと宇髄さんからガーベラの花束を渡され、トンっと背中を押される。
「この扉の向こうに、あいつが待ってる。行ってこい」
「ふふっ。陽奈子ちゃん、行っておいで?」
もう、分かってしまった。
杏寿郎がこんなに沢山の想いを、花束で伝えたかった理由。
その意味が分かった途端、涙が溢れてしまいそうになる。だけど、まだ泣くわけにはいかない…泣くのは、ちゃんと杏寿郎から想いを伝えて貰った時だ。
ぐっと堪えて、重い扉を開ける。
チャペルの中へ入ると、中央の祭壇前にいつもとは違った装いの杏寿郎の姿があった。
かっちり目のジャケットを着て、普段はしてないネクタイまでしている。
「陽奈子、来てくれてありがとう…こっちへおいで。」
優しい声音で、暖かい眼差しで私を見つめる杏寿郎。
その声に、瞳に吸い寄せられるように、ゆっくりと足を杏寿郎の元へと進める。
「杏寿郎…あのっ…お花、たくさんありがとう。それにカードまで…」
「意味は、理解出来たと思うが…きちんと俺から言わせてくれ。」
そう言って目を細めて微笑む杏寿郎にドクンと心臓が高鳴る。
「君とあの時出会えたのは、必然的な運命だったと俺は思っている。どんな時も陽奈子の存在があったから、今の俺がいる。君が俺に捧げてくれた時間は掛け替えのない宝物だ。」
真っ直ぐ私を見つめて、いつもよりすごく真剣な眼差し…
側にあった花束を抱えると、一歩私に歩み寄る。
「ここに40本のガーベラがある…花言葉は『あなたに永遠の愛を誓います』だ…」
「…っ!」
杏寿郎から花束をそっと受け取る。
それだけで堪えていたものが溢れそうになり、視界が滲む。
「陽奈子…これで100本のガーベラになる。その意味は…」
そう言って、片膝を床に付く。
ポッケから小さな小箱を取り出して、その箱を開けて私に差し出してくれた。
「陽奈子…俺と結婚してくれるか?」
その小さな小箱には、キラキラと輝く指輪が入っていた。