第18章 代わり映えのない日々に花束を
一肌脱ぐ…?
それって、やっぱりそういうこと、なんだよね…?
そう思うと余計に期待と嬉しさで、ドキドキと心臓が高鳴った。
車を暫く走らせると、宇髄さんが「そろそろ、あれ出して」とまきをさんにお願いしている。
「陽奈子ちゃん、はいこれ!煉獄さんからだよ?」
ガサッと音を立てて、目の前に出されたのは…
今までよりも大きなガーベラの花束。
その花束にはカードはないみたい。
「わぁ!!すごく綺麗…ありがとうございます!」
「俺らに礼なんていいんだよ。あ、まき。そろそろあれも着けさせとけ。」
「そうだね、もうすぐだし…陽奈子ちゃん悪いんだけど、ここからはこれを着けてね?」
そう言ってまきをさんに手渡されたのは、ヘッドフォンとアイマスク。
それを着けてどこに連れていかれるのか…
アイマスクを着けて、ヘッドフォンを耳に当てると聴いたことない音楽が耳に入ってくる。
初めて聴くはずのその曲は、どこか懐かしく、歌詞の一つ一つが心に響いてくる。まるで杏寿郎との思い出がフラッシュバックのように脳裏を駆け巡るようだった。
暫くその曲に酔いしれていると、トントンと肩を叩かれ、ヘッドフォンを外される。
咄嗟にアイマスクに手を掛けて、外そうとするとまきをさんに止められた。
「アイマスクはまだ取っちゃダメだからね?私が連れていくから、ゆっくり車から降りて?」
「へ…?あ、は、はい…」
手を引かれ、ゆっくりと車から降りる。
視界が奪われているからか、辺りから聞こえてくる鳥のさえずりや、風で揺れる草木の音がはっきりと聞こえる。
「おいおい、仮にも妊婦なんだ。お前も気を付けろよ?俺が連れてってやるから、まきはそっちの軽い方の花束持ってけ。」
妊婦のまきをさんを気遣う宇髄さん。
本当に大切に想ってくれてるんだな…まきをさんも、お腹の赤ちゃんも。
そのまま宇髄さんに手を引かれて、少し歩くとそこで止まった。目の前に何かある、そんな気配を感じ取った。
「陽奈子ちゃん、もうアイマスク外していいよ?」
そう言われ、恐る恐るアイマスクを外す。
一気に光が差し込んで、その眩しさに目を瞑る。