第17章 海と夏祭り *
繋がったまま息を整えて、視線が合うとまた唇を重ね合った。
「陽奈子、君の事が大好きだ。この先もずっと君を愛し続けたい…これからもよろしく頼む。」
「うん、私も杏寿郎が大好き!こちらこそ、よろしくお願いします…」
そう言ってお互いの気持ちを確かめ合うように、記念日らしい言葉を交わすと、再び口付けあった。
落ち着いた頃に、お互いの浴衣がだいぶ着崩れしていることに気付いた。
俺は浴衣だけだからまだいいが、陽奈子の髪はぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「むぅ…すまない。着崩さないようにと、気を遣ったつもりなのだが…」
「ホントだね…まぁ、なんとかなるよ!」
そう言って浴衣の合わせをキュッと直すと、少しはマシになった。問題は髪だ、困ったものだな…
そう思っていると、付けていた簪をスッと抜く。すると、纏まっていた髪がストンと落ち、その髪からふわりと、とてもいい香りがする。
下ろした髪を両手でざっくりと束ねて捻じると、それを纏めて上げる。そこに漆黒の玉簪を差し込み手を離すと、上手く髪が纏まった。
「うむ!その髪型もよく似合っている!」
「ふふっ。ありがとう!あ、そうだ。杏寿郎、ちょっと後ろ向いて?」
言われた通り後ろを向くと、俺の髪を弄り始める。
少しして「もう、いいよ」と言われ、自分の髪に触れる。そっと触れると、いつもとは違った髪型をしているようだった。
「鏡があればいいんだけど…たまには髪を全部上げるのもいいかなって!」
普段は少ししか髪を結っていないせいか、首回りがかなり涼しい。
「よもや…男の俺でも、こんな風に簪を使えるとはな!ありがとう、陽奈子!似合っているだろうか?」
視線を向けると、ふっと反らされてしまう。
伏し目がちでボソリと陽奈子が呟く。
「いつもより…かっこ、いいかも…」
そう照れながら、再び視線をこちらに戻しながら「…艶っぽいし」そう言って俺の髪に触れる。
「そうだろうか?君の方が十分艶っぽいと思うが…」
髪を纏めたことでがら空きのうなじを、スッと指先で一撫でする。その指先を耳から輪郭へと線を描くようにして、顎を捉えるとまた口付けを交わした。
いつの間にか終わっていた花火の代わりに、星空が広がっている。
その星が瞬く下で、幸せを感じながら…