第17章 海と夏祭り *
* * *
その瞬間を見逃すわけもなく、当然唇を奪う。
舌先で唇の隙間を割って入り、舌を絡ませると陽奈子もそれに答えるようにおずおずと舌を絡ませてきた。
くちゅ…くちゅっ、くちっ
「はぁっ…んんっ…ぁ…」
「はっ…ん…陽奈子…すまない、止まれない…」
両手で陽奈子の顔を覆うと、また更に荒く口付ける。
「んぁっ…きょ…じゅ、…ろっ…花火…」
「そう、だったな…すまない…」
名残惜しそうに離れると、頭を抱えて蹲る。
「べ、別に嫌な訳じゃないよ?でも、折角の花火だし…」
「分かっているんだが…どうしても、堪えられなくてつい…」
折角の記念日で、花火を一緒に見ようとしたはずなのだが、俺はどうしていつも抑制出来ないものか…
自分の欲求深さに呆れてしまう。
そう項垂れていると、くいっと浴衣の袖を掴まれた。
「嬉しいよ。そうやって求めてくれるって事は、それだけ私を好きでいてくれてる証拠でしょ?…私もそうだから…」
そう言って、そっと唇を重ねられた。
今度は陽奈子が両手で俺の頬を覆いながら…
「ん…杏寿郎…」
「陽奈子…っ…」
互いの名前を呼び合えば、それが合図のように何度も何度も角度を変えながら、深く求め合う。
「陽奈子…君が欲しい。今すぐに…」
「杏寿郎?…え、ここで!?」
「すまないが、一旦帰っている余裕は、今の俺にはない…」
首筋に顔を埋めて甘噛みをしつつ、舌先でツツッとなぞると陽奈子の口から小さく嬌声が漏れる。
「ふぁっ…ちょっと、まっ…ひゃぁ!」
「大丈夫だ、誰も来ない…」
「んんっ!…そう、言う…問題じゃ…んぁっ」
「他に問題があるのか?」
確かに場所が場所だけに、陽奈子が止めようとするのも理解出来る。だが、そうも言ってはいられない。
もう身体は陽奈子を求め始めているし、熱を一旦鎮める余裕などない。
「だ、だって…持ってきてない、でしょ?」
「む?……あぁ、これの事か?」
陽奈子があれと言うのは、避妊具の事だろう。
財布の中からそれを取り出して見せると、目を見開いて固まる。
それはそうだろう。こんな所にそれが入っているのだから。