第17章 海と夏祭り *
~煉獄side~
あの思い出の場へ来ると、小さなベンチに2人で腰を下ろす。
それと同時に花火が夜空へと打ち上がる。
「うわ~!始まった!…綺麗だね?」
「っ…そ、そうだな!」
少し首を傾げてそう言ってくる陽奈子の表情が、とても綺麗でドキリッと心臓が跳ねた。
辺りが薄暗く、花火で照らされるその顔に、つい見惚れてしまう程…
「あの時はお互い誤解しちゃってて、気持ちを伝えるのが変な感じになっちゃったよね~」
「そうだったな…だが、それも今となってはいい思い出だ!こうしてまた今年も、君の隣で花火が見れることがとても幸せだ…」
そう伝えると、ベンチに置いていた陽奈子の手にそっと、手を重ねる。
それに答えるように小さく微笑んで、陽奈子が指を絡ませてくるとギュッ握ってくれた。
「陽奈子…俺を選んでくれて、本当にありがとう。君と出会えたことが本当に嬉しい…」
「私こそ!選んでくれてありがとう、それと…」
視線が絡み合うと、そっとキスを落とされる。
唇が離れると、頬を染めながらおでこをくつける。
「いつも私を一番に想ってくれて、いっぱい素敵な思い出をくれて…ありがとう、杏寿郎。」
「あぁ、それは俺もそうだ。こちらこそありがとう…もう一度キスをしてもいいだろうか…?」
「ふふっ。聞かなくても返事なんて分かってるくせに…」
また小さくクスリと笑いながら、再び唇が重なった。
花火も中盤に差し掛かった頃、陽奈子が屋台で買ったりんご飴を美味しそうに食べている。
時々、チロッと小さな舌を出して飴を舐める姿にまたドキリッと心臓が跳ねる。
「杏寿郎の分もあるよ?…はい!」
俺がりんご飴を欲しそうにしていると思ったのか、陽奈子はもうひとつのりんご飴を俺に差し出す。
「これではなくて…こっちがいいな」
「え?」
陽奈子の手首を掴んで、持っているりんご飴をペロッと舐める。視線を陽奈子に向けたまま…
すると、みるみる顔が赤くなっていく。
「っ!!お、同じ味だよ?!私のも、こっちも…」
「それでも、俺は君のものが食べたい…」
陽奈子を見つめると、口端にりんご飴が付いている。それをペロッと舐めとると、身体が小さく跳ねた。