第17章 海と夏祭り *
~夢主side~
今日はとても大切な日。
杏寿郎とお付き合いが始まった、あの夏祭りがある。
記念日であるこの日を一緒に過ごそうと、今はお互い浴衣を着てお祭りに向かっている。
「皆も来ればよかったのにね?」
「そうだな!きっと宇髄達は気を遣ってくれたのだろう、今日は俺達の記念日だしな!」
「そっか、そうだよね。嬉しいな…こうやって杏寿郎とまたお祭りに行けるんだもん、すごく幸せ」
握っていた手をキュッと握り直すと、私を見つめてにっこりと笑う。
このお日さまみたいな笑顔が大好きで、こうして隣にいられることに幸福感で満たされる。
お祭りが開催されている所に来ると、去年あった簪のお店が出ていた。
「あ!あのお店!」
「懐かしいな…あれが君へ贈った始めてのプレゼントだったな!」
「今日も着けてるよ?」
髪を指差して、簪を見せると嬉しそうに目を細めて笑う。
「あぁ、よく似合っているな!大事にしてくれて、ありがとう」
「杏寿郎から貰ったものだもん、何でも大切にしたい…お店、見てもいい?」
そう聞くと「勿論だ!」と手を引かれて、簪屋に足を進める。
お店には去年のおじさんがいて、私達を覚えてくれていた。
「おぉ、去年の。その様子だと、あれから上手く行ったんだね?」
「うむ!主人のお陰だ!礼を言う!」
「そうか、そうか。それじゃ、これは私からのお祝いと言うことで、はいどうぞ。」
ニコニコと優しそうに微笑むおじさんが差し出してくれたのは、キラキラ輝く玉簪。
ガラスで出来ているみたいで、色は赤と黄色だった。
「そんな!頂けないですよ!買いますから!」
「いいんだよ。私の作った簪で、2人を結ぶ手助けが出来たのなら、嬉しいからね。ほら、彼のように綺麗な色をした簪だろう?」
申し訳ない気持ちもしたけど、好意でそう言ってくれるのなら、それを断るのも気が引ける。
ありがたく受け取って、その玉簪を照明にかざすと角度で色んな色に変わる。
赤や黄色、そしてそれが混ざり合うとオレンジ色になる。本当に杏寿郎のような簪…
「すまない。だが、ありがたく頂戴としよう!よかったな陽奈子!」
「ありがとうございます。大事にします…」
それをまた杏寿郎が髪に付けてくれて、おじさんに挨拶をすると「またおいで」と優しく微笑んでくれた。