第2章 好きの違い
突然、不死川さんが私の肩に自分の肘を置いてきた。
と、その拍子に持っていたグラスが滑り落ちる
「あっ!!!」
ばしゃっ
私の手をすり抜けたグラスは、中身を盛大に撒き散らし、畳にころりと転がった。
「わぁー!!ご、ごめん杏寿郎!!」
私の飲んでいたグレープジュースは、杏寿郎の右の骨盤辺りから太腿にかけてがっつりとかかっていた。
慌てて側にあったおしぼりで拭うが、もちろん落ちるはずもない。こんなときに限って杏寿郎は白いロンTを着ていた。
「ほ、ホントにごめん!ど、どうしよう落ちないよー!!」
「うむ!気にするな!これぐらいどってことない!」
「いや、ダメだよ!染みになっちゃうもん!!あ、そうだ!杏寿郎、ちょっと来て!!」
そう言って杏寿郎の手を掴み、洗面所まで連れていく。
義勇さんのお店はお手洗いとは別に、洗面所が着いていたのを思いだし、そこで染みを落とそうと思ったのだ。
「んー、落ちないなー…落ちろ落ちろー!」
呪文を唱えるように染みを落とそうとするが、全く落ちない。
少し屈んで染みに顔を近付けてよーく見てみると、若干だが落ちている。
「…あ、少し落ちてる、よーし、もう少し……」
「…よ、よもっ!!」
染み落としに夢中になりすぎて、今自分がとんでもないことをしているのだと気付くのには時間がかかりそうだ…
そう。通りすがりにこの光景を見ようものなら、誰しも「あら!?お盛んねー?」とでも言いそうな光景なのだから…
陽奈子の顔は杏寿郎の股間の目の前。
顔を赤くしている杏寿郎は、まるでご奉仕されているかのようだ。
誰かに見られたらとんだ勘違いをされそうだ、と思っていると。そのよからぬ勘が的中。
一番見られたくない、宇随に見られてしまったのだ。
「…!?お、おいおい!お前ら展開が早すぎんだろ、邪魔したなーニヤ」
「ちょっ!ま、待て宇随!誤解だ!!」
慌てて引き留めるが陽奈子によって阻止される。
「あ!もう、杏寿郎動かないでよ!!」
「陽奈子…こ、これ以上は…」
いくら恋愛に疎い杏寿郎も男だ。こうも異性に体を触られてしまうと、恥ずかしくもなってくる。
「よくないってば!汚しちゃったの私だし、責任は取りますからね!」
いくら言っても聞いてくれない陽奈子に、ただただ成されるがままの杏寿郎。