第16章 約束の花と罰ゲーム *
~夢主side~
杏寿郎から花冠を貰ったあの日から数日。
あの花冠は玄関に飾ってある。
それを見る度に、杏寿郎の想いがどれだけ大きいものか、幸せを感じられた。
仕事が終わって家に帰ると、既に帰宅している杏寿郎が出迎えてくれた。
「お帰り!陽奈子!今日はどうしても、君とやりたいことがあるんだ!!」
家に入るなり、いきなりそんな事を言うものだから、それが何なのかすごく気になる。
それに、いつもより若干興奮気…味?
「これで君と勝負したくてな!いいだろうか?」
そう言って、私の目の前に突き出されたのは…
トランプだった。
「いいけど…急にどうしたの?」
「あ、いや…たまにはこういうのもいいかと思ってな!」
急にトランプなんて、本当にどうしたんだろうか。
もしかして、何か企んでる…?
「陽奈子!こっちにおいで」
「あ、うん…」
屈託のない笑顔で嬉しそうにしている彼の表情を見れば、自分の気のせいなのか…と思う。
私はてっきりババ抜きでもするのかと思ってたんだけど、杏寿郎が神経衰弱をしたいと言うもんだから、それで勝負をしているんだけど……
「おぉ!これは俺の圧勝かもしれんな?」
「うぅ…神経衰弱はちょっと苦手だよ…覚えてられないもん…あー!また違った…勝てないよー…杏寿郎は記憶力良すぎだよ」
場所を覚えるのって苦手。
元々、お店の場所とか記憶するのが苦手だから、こういった事も苦手な分野なのかも知れない。
そう項垂れていると、にやにやと意味深な笑みを浮かべてこちらを見てくる。
「ちなみに、負けた方は罰ゲームだからな?」
「え?!そんなこと言ってなかったじゃん!」
「そうか?俺は言ったと思ったが?」
そうしらばっくれる杏寿郎はなんだか嬉しそう。
もう私に勝ち目なんてないのに、今更そんなこと言うなんて卑怯だ。
罰ゲームなんて、何をされるか…
結局、私の完敗に終わってしまう。
初めから罰ゲームありと言われていたとしても、この勝負に勝つことは出来なかったかも。
ババ抜きなら、まだ私にも勝ち目はあったかも知れないのに…
「俺の勝ちだな!さぁ、罰ゲームだ!」
どんな罰ゲームが待っているのか、不安で仕方がない。
そんな不安を抱えた私を他所に、杏寿郎はご機嫌だ。