第16章 約束の花と罰ゲーム *
「あんまり見ないでよ…恥ずかしいから。」
「先程は恥ずかしいとは言わなかったのに、これは恥ずかしいと思うのか?」
そう聞くとふぃっと顔を反らす。
その照れている表情が堪らなく可愛くなってしまって、後頭部を引き寄せると口付けた。
「なっ…!ほ、ほら!人いるから!!」
ちらほらと土手には犬の散歩やジョギングをしている人達がいる。
「別に構わんだろう?……見せつけてやるといい。」
「もー、またそんなこと言って…今だけだからね?」
恥ずかしがりながらも、どこか嬉しそうにしている陽奈子に再びキスをする。
今度は深く。甘い時間を過ごす、この幸せを感じながら…
暫くそこで幸せな時間を過ごし、再びその辺を歩く。
歩いている間も、俺の作った花冠をずっと頭に乗せたまま、陽奈子はずっと上機嫌だ。
その横顔を見つめているだけで、とても幸せだ。
「そう言えば、杏寿郎のお母さんがこれの作り方教えてくれたって言ってたけど、男の子にそんなこと教えるなんて珍しいんじゃない?」
「そうだろう?だが、それには深い意味が込められていてな…」
母上がなぜ、俺にそんなことを教えたのか。
俺もその時は理解出来なかったが、今ならその意味がよく分かる。
「父上がプロポーズをした時にこの花冠を母上に贈ったそうだ…すごく不恰好な花冠だったらしいが、それでも母上の為に一生懸命作って想いを告げた。その時母上は『この人と一生添い遂げたい』そう思ったそうだ!だから…」
陽奈子の手を取って、その瞳をじっと見つめる。
「この花冠を君に贈ったのは…そんな意味も込めている」
『いつか、杏寿郎にも守りたい、大切にしたいと思う女性が現れたら、その人にもこれを贈ってあげて欲しい…』
あの時の母上の優しい眼差しが、陽奈子と重なる。
握った左手を返し、薬指にそっと口付ける。
「まだその時は取って置きたい。だから今は予約…とでも言おうか。ここはその時のために開けておいてくれるか?」
「…っ、勿論だよ!!予約なんてしなくても、ここは杏寿郎の為に開けておく…待ってるから」
そう言って愛らしく微笑む陽奈子を抱き締める。
いつか、必ず…君に永遠の愛を誓おう。
その時が来るまでは、この花言葉で俺の想いを受け取って欲しい…