第16章 約束の花と罰ゲーム *
この先を少しだけ期待して、甘い余韻に浸っていると、杏寿郎が口角を上げてこちらを見ている。
「どうした、陽奈子。続きを…期待したのか?」
「なっ!?もう、意地悪なんだから!」
「俺はいつでもいいぞ?君が求めてくれるのは嬉しいからな!」
どうしてこう恥ずかしいことを、あさっぱらからさらっと言えるんだろう。と恥ずかしさで布団を被って潜ると、一気に引き剥がされる。
「ほら!今日は折角2人とも休みなんだ。たまにはのんびりと散歩にでも行かないか?天気もとてもいいぞ!」
杏寿郎がカーテンを開けると、眩しい程の朝日が部屋に入ってくる。
「眩しっ…本当だ、いい天気。散歩もたまにはいいね!」
「よし、そうと決まれば支度をして早く出掛けよう!朝は空気が清んでいて気持ちがいいからな!昨日ジョギングをしていて、いいところを見つけたんだ。今日は陽奈子をそこに連れていきたい!」
杏寿郎の日課のジョギングは、いつもは夕方に行っていたけど、最近じゃ朝に行くことが増えていた。
どこに連れていってくれるのか、とても楽しみだ。
家から歩いて暫くすると、川の土手までやって来た。
「こんなところあったんだね。知らなかった…」
ザァーと風が吹いて、草が揺れる。
その心地よさにぼうっとしていると、杏寿郎に手を引かれた。
「陽奈子、こっちだ!」
手を引かれ、その土手を降りていくと目の前に飛び込んできた風景に驚く。
「わぁー!!すごい!!綺麗…」
「そうだろう?どうしても君をここに連れてきたくてな。気に入って貰えたか?」
私の目の前にはたくさんのマーガレットやシロツメクサが咲いている。
花は好き。眺めているだけで癒される。
「うん!ありがとう、気に入っちゃった!」
そう言って、子供の頃に戻ったかのように一気に駆け出して花に触れる。
「綺麗…杏寿郎、連れてきてくれてありがとう!嬉しい!」
「そう言って貰えて、俺も嬉しいぞ!君に渡したいものがある。少し待っていてくれ…」
すると、杏寿郎がマーガレットを1本ずつ摘んで、何かを作り始めた。
少しして、出来上がったそれを私の前に差し出す。