第15章 衝突
~夢主side~
辛くて苦しくても…それでも頭のなかは杏寿郎でいっぱい。
それは他の何でもない、ただ…ただ純粋に杏寿郎が大好きだから。
義勇さんを傷付けてしまったかもしれない。
杏寿郎が好きなことには変わりはないし、これからもその気持ちが他の誰かに向くこと絶対にないから。
だから、ここで義勇さんにきちんと自分の気持ちを伝えなければいけない。そう思った。
「義勇さん…本当にごめんなさい。義勇さんは私の気持ちを知っているのに…それでも好きって言ってくれて…ありがとう。すごく都合いいよね…甘えたい時だけ、こんな…ごめ」
「謝らなくていい。これ以上謝るな、俺が惨めになる…」
「ご、ごめんね…?」
「だから、謝るなと言っている。お前がそれだけ煉獄を心から想っていることは十分にわかった。俺の方こそ、自分勝手に気持ちをぶつけ、困らせてすまなかったな。」
そう言ってまたいつものお兄ちゃんのような優しい眼差しに戻って、頭をひと撫でする。
その手は今までで一番優しかった気がした。
それからまた時は過ぎ…
杏寿郎からはあの後、電話もメールも来ることはなかった。当然だ…無視し続けてしまったんだから。
そんな日が続いて、とうとう杏寿郎が帰って来る日になってしまった。
昨日、杏寿郎から「明日そっちへ帰る。きちんと話したい」と一言だけメールが送られてきた。
話したいのに、話せない…
会ったらなんて言えばいいのか、そもそもどんな顔をして会えばいいのか……
はっきりしない自分の気持ちに呆れるほどだ。
フィエルテの帰り道、駅から家までの道のりがすごく遠く感じる。足取りも重い…
家の付近まで来ると、アパートの前に人影が……
……杏寿郎だ。
会いたかった人。私の大好きで大切な人。
今すぐにでも抱き締めたい。
でも、今さらどんな顔して会えばいいの…?
そう迷っているうちに向こうがこっちに気付いた。
「……っ!……陽奈子っ…」
少し離れているけど、それでも分かってしまう。
杏寿郎が切なそうに、申し訳なさそうに私を見つめていることを…