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し ん あ い【鬼滅の刃/煉獄/R18】

第15章 衝突




~冨岡side~


陽奈子の心はとっくに煉獄でいっぱいかと思ったが…マイナスなことばかり考えるのは、心にまだ少しだけ隙間がある。それなら、俺にもまだチャンスはあるということか。
こいつの弱みに漬け込んで、こんなことを考える俺は卑怯者だな…



煉獄だから…あいつなら。とそう思えたから何度も身を引こうと、自分の感情を抑えて今までこいつの側で見守って来た。
嬉しそうに笑みを浮かべながら俺に頼る姿。それだけで十分に嬉しかった。

だが、今の陽奈子はどうだろうか。
不安と悲しみで今にも押し潰されてしまいそうな程だ。俺の好きな笑顔はどこにもない…


「俺は…お前がそんな顔をしているのは見ていられない。今まで自分の感情を抑えて、お前の幸せを願ってきた。」

「ぎ、…ゆうさん…」

「お前にそんな顔をさせるために、煉獄に任せたつもりはない…」


そう言うと陽奈子の瞳から堪えていた涙が零れる。
その涙を拭い、頬に手を添えるとその瞳を見つめる。


「少しの隙間があるのなら…少しだけでもいい。俺のことも見てはくれないか…?前にも言ったが、俺はまだお前のことが好きでいる。煉獄を想っていることは、十分に理解している…だが、こんなに悲しい顔をさせるあいつに、お前を渡したくないと思ってしまう…」

「義勇、さん…でも、私はっ…」

「分かっている。それでも俺はお前の側にいたいと思う…お前を悲しませ、泣かせることは絶対にしない。全て受け止めてやる。だから…」


これ以上、困らせることをしては駄目だと分かっていても、抑えていた感情は歯止めが効くことはなく、陽奈子の手をそっと握ると手の甲を口元に寄せる。


「っ!義勇さんっ…ごめ…ごめんなさい…私、私っ……」


手の甲に口付ける前に、その手を払い除けられた。


「ごめ、んなさい…義勇さんの気持ちに答えることは出来ない…こんなに辛くて苦しいのも…それは、杏寿郎が大好きだからっ」

涙を流しながらも、笑ってそう答える陽奈子。
その瞬間、ずっと胸につかえていたものが取れた気がした。


初めから、隙間なんてものはなかったのだ。


少しでも、と淡い期待を抱いて、自分の気持ちを無理矢理押し付けていた。
それはきっと、心のどこか片隅で、この気持ちにけりをつけたかったからなのかも知れない…

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