第15章 衝突
~夢主side~
あれから1週間経った。
昨日、杏寿郎から「話したい」と送られてきた。だけど、どう接したらいいかわからず返信出来ないでいた。話をしたところで過去が変わる訳じゃないもの…
ずっと胸のつかえが取れないまま、それでも時は過ぎていく…
今日は村田くんと一緒で、フラム閉店後の片付けをしている。
他愛もない話をしながら、ある程度終わるとまとめたごみ袋を持ってお店の勝手口から外に出る。
がさっ
「ふぅ、これでよしっ、と。……!!」
ごみを出し終わると同時にポケットに入れていた携帯が震えた。どうやらメールではなく、電話みたい。もしかして…杏寿郎?
そう思って画面を確認すれば、その予感は的中した。
手に持った携帯がずっと震えている。
震えているのは私の手も。
…何を話せばいいんだろうか。
暫く携帯の画面と向き合って悩んでいるうちに、着信は途切れてしまう。
「はぁ…本当に、どうしたらいいの…?」
一言呟いて、その場に蹲った。
考えても考えても、答えは出ないまま…
次第に涙が込み上げる。泣いたって解決する訳じゃない…だけど、杏寿郎の声が聞きたい…会ってごめんなさいってちゃんと謝りたい…それに杏寿郎がなんであんな行動を取ったのか…その本心を聞きたい。
あんなことがあっても、私のなかは杏寿郎ばかり…
暫くして勝手口が開く音がした。
その音に反応して振り返る。村田くんがいた…
「陽奈子ちゃんどうしたの?なかなか戻って来ないから心配して…ってえぇ!?な、泣いてるの!?大丈夫!?」
「な、なんでもないっ。ちょっと……お腹が、痛いだけ…だから」
咄嗟に苦し紛れの嘘を吐いて顔を反らすと、村田くんが横にしゃがみこんで背中を撫でてくれた。子供をあやすように…
「最近、様子が可笑しかったのは気付いてたんだけど…泣く程辛いなら、俺で良ければ話聞くよ…?一人で抱えるのって辛いだろうし…」
そう優しく言葉をかけられると、我慢していたものが一気に溢れた。
「ぅっ…うわぁぁ!…ひっく、…ううっ…」
「よしよし。いっぱい泣いていいから…」
すごく優しい声音で温かい言葉をかけてくれる、村田くんのその優しさに涙が止まらなかった。
ありがとうと言おうとした時、頭上から聞き慣れた声が降ってきた。