第15章 衝突
「そうか。あまり遠慮し過ぎてもいいものではないのか…」
「おー、そう言うこった。気を遣うのも大概にした方がいいぜ?今回みたいな事にも繋がるしな。遠慮も時には大事だけどな!」
「ならば、すぐにでも電話をっ…」
と携帯をポケットから取り出すと、その手を制される。
「さすがに今日は止めとけ。お前はほんっと、せっかちだな!さっきの話だと、陽奈子が電話に出る訳ねぇだろ。誤解したまんまだし、怒ってんだろ?少し時間置いて、落ち着いてからにしてやれよ」
そう言って宇髄は立ち上がり「んじゃ、また明日な」と部屋へと戻った。
確かにそうだ。あんなに怒った陽奈子は初めてかも知れない…。
俺の実家で父上に怒ったこともあったが、あれ以上だ。
とりあえず、今日の所は諦めてまた時間を開けてからきちんと話をしよう。
そう思いながら、星空を見上げた。
悶々としたまま翌朝を迎える。
もちろん、陽奈子からは連絡はない。
食堂に着いて、席に座ると目の前には以前、俺の為に陽奈子が作ってくれたものに似たフレンチトーストがあった。
それを見て陽奈子のあの笑顔を思い出す。
また深くため息を吐くと、俺の目の前に座っていた竈門少年が心配そうに顔を覗き込む。
「煉獄さん、どうかしたんですか?なんだか、浮かない顔色ですけど…」
「むぅ…少し、な。俺の事は気にするな!ほら、きちんと食べないと仕事にならないぞ!」
「あ、はい!フレンチトーストって美味しいですよね。あ、そう言えばこの間、善逸と伊之助とフィエルテに行ったんです!あそこのフレンチトースト、美味しかったな~。あ、煉獄さんも今度一緒に行きませんか?」
嬉しそうにフレンチトーストを頬張りながら、そう言って屈託のない笑顔を向けられる。
そのフレンチトーストを作った人が俺の恋人だ!とは今は言えない…
「炭治郎。今は何も言うな…ほら俺のもやるから、いっぱい食え」
首を傾げる竈門少年の肩にポンッと手を置いて話を反らす。宇髄なりの気遣いだろう。宇髄のこういう時の気遣いはありがたい…
宇髄の気遣いに感謝しつつ、フレンチトーストを口に運ぶ。陽奈子の笑った顔が見たい…早く会ってただ一言「すまない」と謝りたい…。
俺には、君だけだと…
そんな思いばかりが募っていく。