第15章 衝突
それなら…私だけが責められるのは可笑しいんじゃないだろうか。女の人とホテルに行くなんて聞いてない。言えないことがあったから黙ってるのか…
『君が…友達と言うのなら、それはそれでいい。だが、俺は君がこの事を黙っていたことに不信感を抱いている…疚しいことでもあるのかと疑ってしまうぞ?』
こそこそとしていれば、怪しまれても可笑しくはない。だけど、杏寿郎だって…
「不信感を抱いているのは…杏寿郎だけじゃないよ。」
『むっ?どういう意味だ』
「さっき、善逸くんから聞いたの。杏寿郎が女の人とホテルに行ったって…!」
その人に言い寄られて、断れない性分だったから仕方なく…?でも、だからってそんな簡単にホテルに行くものなの…?
私への不満がそうさせてしまった?
信じたい、だけど黙ってたってことは、言えないそれなりの理由があったからなんじゃないのだろうか…
『そ、それはっ…』
「杏寿郎が怒るのは分かる。私が言わなかったのがいけなかったから…だけど、杏寿郎だって黙ってたじゃん。言わないってことは……っ、そのつもりだったじゃ、ないの…?」
『陽奈子…君は俺を疑うのか?確かに俺が伝えなかったから誤解をしているとは思うが、断じてそんなことはない!』
それなら、他の人に任せることも出来たんじゃなの…?そんな所に2人で行けば誰だってそう言う関係になるって思うに決まってる。
杏寿郎がそんなことしないって信じたい。信じたいけど…女の人と2人でホテルに行った事実に変わりはない。
「もういい。これ以上話してても辛い…今はもう話したくない!」
『陽奈子!?ちょっと待ってくれ!話をっ…』
どうしても感情を抑えきれなくて、杏寿郎を無視して電話を切ってしまった。
携帯をベッドに放ると、側に置いてあるシロクマのぬいぐるみを抱き締める。
「本当は信じたい、信じたいよ…嫌だよ…優しくするのも、触れるのも私だけにして欲しい…」
きっとその人は、杏寿郎の暖かい優しさに甘えたくなったんだろう。傷心している時に与えられる優しさは、とっても胸に染みる。だからその人は杏寿郎と離れたくなかったんだろう。
きっと杏寿郎もその人を放って置くことが出来なかったから…