第15章 衝突
『あ、ごめん!こういう話、いやだったよね?いや、そういう話をしたい訳じゃないんだけどさっ…あれ?帰ってきたみたい。泊まりじゃないのか…』
先輩が帰ってきたみたい。
そろそろ電話を切った方が良さそうだなと「先輩帰ってきたなら邪魔しちゃ悪いし、切るね?」と声を掛ける。
『あ、待って、陽奈子ちゃん!』
咄嗟にそう私の名前を口にすると、後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
『陽奈子…だと?我妻少年、君は誰と話しているんだ!?』
『だ、誰って…今日話した女の子だけど…って、ちょっと!』
ガサッと携帯を奪う音がして…
画面には、連絡をずっと心配して待っていたはずの人…
杏寿郎だ。
「えっ!?きょ、杏寿郎!?なんでっ…」
『なんでとは、俺の方が聞きたい!なぜ陽奈子が我妻少年と電話している?知り合い、か?』
「知り合い、と言うか…」
尻込みしていると、杏寿郎の顔が一気に曇る。
『最近…様子が可笑しかったのは、この事か?』
「隠したかった訳じゃ…何度も言おうとしたんだけど…杏寿郎になんて言われるか分かんなくて…」
そのまま沈黙が続く。その嫌な空気を破ったのは善逸くんだった。
『お、俺が!陽奈子ちゃんの連絡先を無理言って聞いたんだ…2人は付き合ってるんだろ?…ごめん。でも、まさか本当に陽奈子ちゃんに彼氏がいるとは思わなくて…いつも女の子にそう嘘吐かれて断られてたから。まさか煉獄さんが陽奈子ちゃんの彼氏、だったなんて知らなくて…』
シュンとした声で話す善逸くんは、いつもの明るい表情はどこにもなくて、本当に申し訳ないことをした。と反省しているみたいだけど、悪いのは私。
「善逸くんは悪くないよ。私がすぐに話すべきだった。黙っててごめんなさい…だけど、善逸くんとは本当に友達で」
『なぜ早く言ってくれなかったんだ?俺は…すごく心配したいたんだぞ。君が隠し事をするなんて、今までなかったから…不安で仕方がなかった』
「そ、それはっ…ごめんね…。だけど何て言ったら変な心配かけないかなって考えてたら、言い出すタイミングが掴めなくて…」
そうしてまた沈黙が続いた。
そこでふと気付いた。
さっきの善逸くんの話を思い返してみる。
その先輩が杏寿郎だったなら、女の人とホテルに行ったはずじゃ…