第15章 衝突
背伸びをしていると後ろから手が伸びてきて、お皿をスッと取ると義勇さんが棚に戻してくれた。
「あ、ありが…と……っ!?」
お礼を言って振り向くと、義勇さんの顔が目の前にあった。そのままじーっと私の瞳を見つめてくる。
「ぎ、義勇さんっ…ち、近いからっ」
「陽奈子…」
名前を呼ばれて片腕を掴まれた。突然の事で驚いてその手を振りほどこうとするけど、男の人の力には勝てなくて…
「義勇さ…ん…痛いよ…はな」
「何かあったのなら、話せ」
「え…べ、別に何も…」
「お前は分かりやすい。すぐに顔に出るからな。」
パッと掴まれた腕を離されると、掴まれた場所が少し痛む。
「言いたくないのなら、それでいい。だがお前がそんな顔をしているのは、放っては置けない。」
自分でも気が付かなかった。出さないようにしていたつもりでも、義勇さんにはお見通しなのか…いや、村田くんにも気付かれるくらいだ。きっと私がいくら平静を装ったとしても、隠しきれないんだろう…そんなに器用な方でもないし…
「ごめんなさい…でも大丈夫だから、気にしないで?」
「心配するのは当たり前のことだ。はぁ、全く…無理だけはするなよ?」
そう言って小さく微笑むと頭をポンとひと撫でして、またシンクへと戻って洗い物を再開し始めた。
「…ありがと、義勇さん」
「別にいい。」
こっちを向かずに手を止めるとこなく、そう一言。
本当に優しい。杏寿郎とは違ったその優しさに、胸が少しチクッと痛んだ気がした。
義勇さんの気持ちは知ってるから…。その優しさに甘えてしまったら、傷付けてしまいそうで…
洗い物が終わると義勇さんが家まで送ってくれた。
「今日はご馳走さまでした。やっぱり義勇さんのご飯はいつ食べても美味しいね!」
「それはよかった。煉獄が帰ってくるまで、寂しいと思ったらいつでも来るといい。」
「うん、ありがとう。気をつけてね?」
そう言って義勇さんを見送って、私も家に入った。
家に入ると同時に着信音が鳴り響いた。