第15章 衝突
~煉獄side~
家を出てから、大きなため息を吐く。
暫く会えなくなるのが寂しいという事と…
陽奈子が何か抱えている事を聞き出せなかった事。
正直、無理にでも聞き出そうとも考えた。だが、責めるような形になるのはよくないと思ったから、陽奈子から言えるようになったらと思っていたのだが…
結局、その事については何も聞けぬまま家を出てきてしまって少し後悔している。
ここ数日、陽奈子の様子が変だったのには気付いていたが、それの原因が何なのかはっきりしなかった。
ただ、気になるのは……陽奈子の携帯。
通知音が鳴る度に、陽奈子はどこかよそよそしく、挙動不審な行動を取っていた。
誰からか聞けば「あ、綾ちゃん…」としか答えない。
何か言えないことがあったのか……
不安は消えず、モヤモヤと心が曇った。
会社に着くと、出張メンバーがすでに揃っていた。
宇髄と新入り3人、それから後輩が2人。
「おぅ、煉獄!お前が最後だぞ。ったく、そんなに別れが名残惜しかったかよ?」
「よもっ…!!ち、違うっ…くはないが。」
「まっ、すぐ帰って来れっから!」
宇髄がバンバンと背中を叩く。
本当にすぐに終わればいいのだが…
戻ったら、陽奈子にきちんと話をしよう……
バンに乗り込んで、車を走らせる。
運転している俺の隣には、新入りの我妻少年。
先程から携帯を見つめてニヤニヤと嬉しそうだ。
「そんなに出張が嬉しいか?」
「えっ!?い、いや…出張が嬉しいって訳じゃ…。最近、連絡先交換した女の子とのメール読み返してて…うふふ~♡」
そう言ってまた、携帯を嬉しそうに眺めていた。
その相手が少し気になったので、どんな人なのか聞こうとすると、後ろから宇髄が覗き込む。
「これから仕事だってのに、浮かれてんなよ?怪我すっぞ、アホ。で、どれどれ?」
「俺にも見せろよ新入りっ!」
「ちょっ!あんた達、人の携帯覗くなんて悪趣味ぃっ!!」
「こら、善逸!先輩にはきちんと敬語を使えっていつも言ってるだろう?あ、こらっ伊之助!窓を開けて乗り出しちゃ危ないだろう!」
「ワーハッハッハッ!!すげぇすげぇ!早ぇーぜっ!!」
そんな賑やかなやり取りを皆がしているなか、俺は陽奈子の事ばかり考えていた。