第14章 ふくらみ…ふくらむ。 *
~煉獄side~
陽奈子に髪をいじられるのはとても心地がいい。心地よさに目を瞑っていると、後ろからくすりと笑い声が聞こえた。
「む?どうし…君は俺の髪で遊んでいるのか?」
「えぇ~?遊んじゃダメだった?可愛いけどな、猫の杏寿郎。」
目を開けると俺の髪で耳を作って楽しそうに遊んでいる。
「お付き合いする前のこと思い出しちゃって、ふふっ本当に猫みたい、可愛い!」
ぶわぁぁっ
そう言って笑う陽奈子の表情に、いつしか『好きの感情』を知った時と同様の感情が身体を駆け巡る。
照れてしまって陽奈子を見ることが出来ない。思わず片手で顔を覆うと俯いてしまう…
「どしたの?」
「君は、だから本当に…」
「へ?猫じゃなくて熊とかの方がよかった?」
いやそうではない…。先程の艶っぽい姿から一変して、今度は屈託のない笑顔が愛らしい…俺は心底陽奈子に惚れている…この上なく。
「お~い?杏寿郎、ホントにどうしたの?」
「な、なんでもないぞ!ほら、流すから…」
誤魔化された陽奈子は少し不服そうだったが、今は恥ずかしくて言えそうもない。そう思いながら髪を流した。
「ほら、次は陽奈子の番だぞ?ここに座って。」
「ふふっ、お願いします」
嬉しそうに髪を洗われる陽奈子の顔は、先程の情事時の表情とは一変して、あどけない少女のようだ。
髪を流し終え、身体を洗い終えるとバスタブに浸かる。本当は洗ってあげたかったのだが、それは陽奈子に全力で拒否された。不服ではあったが、確かに俺が洗えば、それだけでは済まされなそうだ。
「うわぁ~!ほんっとにふわふわ!気持ちいいねっ」
「うむ!なかなかいいものだな、まだ幾つかあったからたまにこうして入るとするか!」
向かい合ってモコモコと泡を集めたり、ふぅっと吹いて楽しそうにしている姿を見ているのはいいものだ。飽きることはない。だが、先程からこの微妙な距離がもどかしい…
「陽奈子、こっちにおいで」
ぐいっと片腕を掴むと反転させて後ろから抱き締める。