第14章 ふくらみ…ふくらむ。 *
~煉獄side~
陽奈子が引っ越す日になった。
今日から俺の部屋で一緒に過ごすことを考えると、心が弾む。
「おはよう、陽奈子!」
ぎゅっ
「わっぷ!…お、おはよう杏寿郎…」
陽奈子が部屋から出てきた瞬間、思わず抱き締めてしまう。一瞬驚いたようだったが、背中に腕を回して抱き締め返してくれる…一気に陽奈子の匂いが鼻を掠めて、抑えきれない感情が込み上げる。
顎に手を添えてキスをしようとすると待ったがかかってしまった…
「きょ、杏寿郎!う、宇髄さん…待ってるんでしょ?」
「む…。それもそうだな。すまん、嬉しくてつい…お楽しみは取っておくとしようか」
そう耳元で囁けば、みるみる顔を赤らめて「もう!」と頬を膨らませる表情が堪らなく愛おしい。
陽奈子の荷物を全て運び終え、荷解きをある程度終わらせる頃にはすっかり日も落ちていた。
「荷物はこれで全部だな?」
「はい!本当にすみません…折角のお休みだったのに、手伝ってもらっちゃって…」
「気にすんなって!じゃ、邪魔者は退散するとしますかね…ニヤニヤ」
また宇髄はさもしい事を言って帰って行った。
「なんか…変な感じだな…でも、今日から杏寿郎と一緒にいれるのがすごく嬉しい!」
「あぁ、俺もとても嬉しく思う…陽奈子、こっちにおいで?」
両腕を広げてソファに呼び寄せると、おずおずと俺の腕のなかに収まる。そのまま抱き締めると、すりすりと頬擦りをしてくすりと笑う。
「ん?どうした?」
「うん…?……幸せだなって。」
「そうだな…俺も今、同じことを思っていた。」
視線が合うと唇が重なる。
「ん…杏寿郎…?」
軽いキスだけで離れると、物足りなそうな表情の陽奈子。この先を期待するような欲情した瞳…
「今日は引っ越しで疲れただろう?だから、その…この先は、また今度にしよう…」
本当は俺だって今すぐ陽奈子を組み敷いて抱きたい。だが、このところフィエルテオープンや実家への挨拶と続いて、今日は引っ越しだ。フィエルテも繁盛しているようで毎日忙しそうだったから、陽奈子のことを考えれば今日のところはすぐにでも休ませてやるべきだろう…このまま抱いてしまえば動けなくなるのは目に見えている。