第13章 喜ばしき日
「大丈夫だよ!ありがとう、明後日からお世話になります」
「…あぁ!こちらこそよろしく頼む!」
そんな私達のやり取りを頬ずえを付いて、こちらをニヤニヤと見てくる宇髄さん。何か言いたげだ。
「な、なんですか…?」
「いーや?べっつにー。今日はなんか暑いなぁ~?」
明らかに茶化してくる宇髄さん。言いたいことは分かるんだけど、こうもあからさまに言われると恥ずかしくなってくる。と、不死川さんの姿がないのに気付く。
「あ、今日は不死川さんは?」
「不死川は別の現場だからな。そうだ、百瀬少女なんだが大分落ち着いて来たそうだから、近々職場に復帰するそうだぞ?」
玲愛ちゃんのおめでたの話を聞いた時はびっくりしたけど、すごく嬉しかった。悪阻がしんどいって聞いてたから心配してたけど、落ち着いたみたいでよかった。
「お~、そうそう!職場で思い出したけどよ、今年の4月から新入社員増えんだわ」
グラスに注がれた水を飲みながら、宇髄さんが思い出したように話し始めた。
「そうだったな!3人入るんだ。皆いい子そうだったぞ?」
「そうか~?一人はくっそ真面目そうだったけど、後の2人はなんか頼り無さそうだったけどな…大丈夫かよ、あの新入り」
新しいメンバーが加わるみたいで、杏寿郎は嬉しそう。一方の宇髄さんは不安げだ。「そんなに問題ありそうな子達なの?」と杏寿郎に尋ねてみる。
「いや?そんなことはないと思うが…俺は少ししか会っていないからな。」
「俺は面接ん時いたからよ。黄色いのと、猪みてぇなキャップ被った奴は怪しいな。大体面接にキャップ被ってくるかよ、普通。あれ雇った社長もなかなかだぞ?ったく、うちの会社は問題児ばっかだよ」
宇髄さんは大きな溜め息を付いて、また水を口に含んだ。
黄色いのと、猪のキャップ…まさか、ね?
今日会ったあの3人組が頭に思い浮かぶ。
でも、そんな偶然あるわけないよな、と思いながら杏寿郎達のオーダーを取ると、厨房に持っていく。
お昼休憩が終わるとまた仕事に戻る為に席を立つ。
「では、また明後日。連絡するから、それまで何もしなくていいからな?」
「ふふ。ありがとう、待ってるね?」
杏寿郎のこの心配性は、愛されてる証拠だなと幸福感に満たされた。