第13章 喜ばしき日
翌日、学校へ行くと昨日の話で校内中が騒がしかった。
あの後、どうなったのか心配で耀臣さんの姿を探すと、ちょうど職員室から出てきた。
「耀臣さんっ!あの」
「何も心配するな。謹慎になっただけだ、俺の大会までにはなんとか間に合う。お前は大会、絶対に優勝して頂点に立て。応援してるからな」
そう言ってヒラヒラと手を上げながら去っていく耀臣さんの背中がなんとく、小さく見えた気がした。
その翌日、事実を知った俺は愕然とした。
耀臣さんは退学届けを提出し、自らこの学園から姿を消したのだ。
顧問の先生に事情を聞くと、怪我が悪化してこれ以上続けることは難しい、と主治医に告げられたそうだ。そんな時、あの輩が絡んできて喧嘩になったと話していたらしい。
もちろん、あの騒動を目撃した耀臣さんが俺を庇って間に入ってくれたのだが…俺があの場にいたことはどうやら一言も話してないようだ。
部員から聞いた話だが、あの輩は相手校の差し金だったらしい。俺に怪我をさせれば勝てると思ったのか…全く無粋な連中だ。
その後、耀臣さんの姿を探したが既に引っ越していて、誰も彼の居場所を知るものはいなかった。
─────……
「あの時、耀臣さんに助けて貰えなければ、あのまま問題を起こして、退学になるところだったやも知れん。陽奈子さんのお父様には本当に感謝している。」
「父にそんな過去があったなんて…」
「きっとお父様は、いらん気を使わせたくなかったのだろう。そういう人だ、君のお父様は。」
陽奈子さんを初めて見た時、耀臣さんの面影少しあった。気のせいだと思っていたがやはり間違いではなかった。こうしてまた繋がりが出来たのもきっと、必然なんだろう。
「もし許されるのなら、お父様に会えないだろうか…?」
「えっと…直接父に話をした方がいいんじゃ…?」
「ふっ、そうだな。君に聞くのは可笑しな話だ。俺に会いたくないかも知れんしな。」
そう言うと「そんなこと思ってないですよ?」と柔らかく微笑む。その笑った顔がやはり耀臣さんと似ている。
「父は、共に情熱を燃やせる友人がいた。とよく言っていたので…」
「っ!…そうか。ありがとう陽奈子さん。」
杏寿郎達が帰った後、耀臣さんに連絡を取ると懐かしい話で大いに盛り上がった。