第13章 喜ばしき日
~槇寿郎side~
これは運命なのか…杏寿郎と陽奈子さんの出会いが、こうして俺の元に再び廻ってくることになるとは…
「陽奈子さんのお父様…耀臣さんとは学生時代の先輩後輩の仲でな、遅くまで残る練習熱心な耀臣さんとよく一緒に帰ったものだ。ある日、騒動が起きてな……」
…… ──────
地区大会が迫ったある日、家路に向かっていると不良の頭が声を掛けてきた。
「てめぇか、煉獄ってやつぁ!ちょっと面貸せや。」
「む…?低俗の輩が、俺に何のようだ?」
「あ"ぁっ!?てめっ、今なんつったぁ!?」
がしっと肩を捕まれる。
だが、ここで問題を起こしてはなるまい、ここは放っておくのが一番だろうと思い、その肩を軽く払うと間をすり抜ける。
「チッ…てめぇ、さっきから馬鹿にしやがって…ごらぁぁ!!!」
俺目掛けて木刀が振りかざされる、避けようと思えば十分避けられる。
そう思った瞬間……
ばしっ
「その辺にしとけ。」
「て、耀臣さん!こんな輩、放っておくべきでは…」
木刀を素手で受け止める耀臣さんの顔は、今だかつて見たこともなく怒りに満ちている。だが少し、哀しそうにも見える。
「俺はな…こうやって寄って集る、卑怯な奴が嫌いなんだよ。それに今の俺は…虫の居所が悪い。誰の指図でこいつに手出すのか知らねぇけど、大事な大会控えてんだ。そんな奴に怪我の一つでもさせたら…許さねぇぞ…」
(誰かの、指図だと…?)
耀臣さんは木刀を振り払うと、手首を掴んで自慢の背負い投げで地面に叩き付ける。
「耀臣さんだって大切な試合がっ!いけません!」
俺の声に耳を貸そうともせず、次々と輩を投げ飛ばす。気が付けば、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。誰かが騒ぎを聞きつけ通報したようだ。
「…くっそ、お前ら行くぞっ!」
輩が立ち去ると、耀臣さんに背中を押される。
「お前は何も関係ない。俺が起こした問題だ、早く行け。」
「何を言っているんです!?耀臣さんも大事な大会前なのに、何をして」
「いいから早く行けっ!!」
半ば強引に押されると、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
耀臣さん、何か理由があるのだろうか…いや、そんなことはあり得ない。例え理由があろうとも空手技を外で使うのは禁止されている。
ならばどうして…